ニュース・レポート
2023.07.26
カントリーリスク&経済レポート

アフリカにおける債務持続性 再び注目が集まる

Debt sustainability in Africa under the spotlight again

アフリカでも、パンデミックの影響で商品価格や通貨の急落、そして観光業の破綻などを背景に経済成長が 鈍化しました。この大きな要因としては、人や商品の移動が妨げられた、輸送システムの混乱が挙げられま す。これらは、ウクライナ戦争の影響によってさらに悪化し、特に世界的な金融引き締めとドル高が進む中、 穀物、石油、肥料の供給不足と燃料製品価格の高騰がアフリカ諸国の財政状況を悪化させました。また、原 材料価格の上昇はインフレを加速させ、食糧不安の拡大の要因となり、社会不安や政治不安を引き起こして います。

 

大陸全体の財政・対外情勢の悪化

アフリカ大陸の主要経済国の中には、財政収支と対外収支の両方で弱体化している国もあり、これらの国々 の経済成長モデルの弱点が浮き彫りとなり、輸入(食品・エネルギー・中間製品・設備)への依存、豊富で安 価な資金調達への依存、低い財政収入が困難の原因となっています。過去10年間で経済成長を大きく進め てきたエジプト、エチオピア、ケニア、そしてガーナでさえ、経済危機に直面しているのは、主に財政収支と対 外収支の弱さに起因しています。

 

ウクライナでの戦争は、アフリカ経済にも大きな打撃を与え、中でも商品輸入に大きく依存している経済の経 常収支に急激な悪化を引き起こしました。石油や基礎農産物の価格が急騰し、交易条件が悪化、そして輸 入コストも多くのアフリカ通貨の下落によって押し上げられました。この減価は金利上昇と相まって、対外債 務、特にドル建て債務の返済負担を増大させました。

 

相対的に良い結果を出したのは一握りの商品抽出国(アンゴラ、南アフリカ、アルジェリア、ボツワナなど)で、 パンデミックやウクライナ戦争の影響から高騰した商品価格から恩恵を受けました。

 

増え続ける過剰債務の状況

世界の持続不可能な債務や過剰債務の高リスク事例の半分以上はアフリカで起きています。この危機は、 アフリカ大陸の財政資源の弱さを明らかにしており、各国は財政支出のために債務を負わざるを得ず、過剰債務のリスクを更に高めています。アフリカ31カ国の2020年における税収は、GDPの平均16%を占め、OECD 諸国の平均 (33.5%) やラテンアメリカ諸国の平均 (21.9%) を大きく下回っています。同時に、財政収入は危機 による活動の縮小によって制限されており、その一方でアフリカ諸国の政府は財政に重くのしかかる支援策 (補助金、減税)が必要な状況に迫られています。

 

債務が増加するのに加えて、債務コストの増加もあり、インフレとの戦いの中で金利が上昇しています。この対外公的債務返済の増加は10年ほど前からの傾向で、サハラ以南のアフリカで2009年から2019年の間に 29%から43%に増加した民間債権者の割合の増加に関連しています。アフリカ諸国の国債発行量は、国際資 本市場で着実に増加しており、国際資本市場では、多国間の融資機関や二国間の公式パートナーよりもかなり高い金利が適用されています。

 

そのため、厳しい経済環境の中でコストの高い債務が蓄積された結果、過剰債務のケースが増え、また多く の国債評価が引き下げられたため、一部の政府は債務返済を滞納している状況です。IMFの債務存続可能性調査の対象となったアフリカ36カ国の3分の1は、パンデミック前から既に債務超過の状態にあるか、債務 超過のリスクにさらされているとみられていましたが、2度の連続したショックにより、全ての国がリスクにさら されている現状です。

 

経済的苦境は社会、政治、安全保障の問題を増大させる

アフリカ大陸の経済成長は著しく減速しており、今後もこの減速は継続する見込みです。 例えば、エジプトの2021-2022会計年度の成長率は、前年比6.6%と推定されていますが、2022-2023年度には3.5%に減速し、2023-2024年には4.0%にしか上昇しないと予測されており、パンデミック前の成長率を下回る予測です。

 

全体として、アフリカの経済成長は2022年には3.9%でしたが、2023年は3.5%までしか達しない可能性があり、 これはこの期間の年間人口増加率2.6%を考慮すると、発展とは到底かけ離れた状況です。

 

インフレショックとともに、経済政策の引き締めは社会不安を引き起こす可能性があります。2020年以降、リベリア、チュニジア、モロッコ、セネガル、南アフリカ、ケニアなどで多数の社会不安が発生しています。ギニア、マリ、ブルキナファソ、スーダンで見られたように、不満がクーデターという形で政変を煽っており、サヘ ル、アフリカ大陸東部、西アフリカにおけるジハード主義者の活動だけでなく、カメルーン、中央アフリカ共和 国、コンゴ民主共和国、エチオピアなどにおける反乱や、特にアフリカ大陸に広く影響を及ぼしているナイ ジェリアにおける犯罪にも、大きな影響を与えていると言えます。

このプレスリリースをダウンロード : アフリカにおける債務持続性 再び注目が集まる (513.97 kB)

お問い合わせ


Japan

コファスジャパン信用保険会社
マーケティング&コミュニケーションズ
 小川 のりこ
 
T. +81 3 5402 6152 
noriko.ogawa@coface.com

トップ
  • 日本語
  • English