2023.12.20
経済関連出版
南欧:負債からの脱却には 観光業に加えて、人口危機の解決必須
高まる観光業の役割
EUにおいても記録的な夏を記録した今年、観光客の宿泊施設での宿泊数は過去10年間で最高水準に達した(2023年上半期は1億9,800万泊、すなわち2019年上半期比+1,3%)。
インフレと旅行費用の上昇が消費者の財布に重くのしかかっているものの、家計は他の出費に比 べ、旅行への支出意欲を維持している。このような観光客の流入だけでなく、特に交通機関の価格上 昇の結果、観光事業の売上高は2023年第2四半期に2022年第2四半期比で平均30%、20192年比で 25%増加した。
観光業の回復は、観光業に依存度の高い、特に南欧諸国の成長回復力において中心的な役割を果たすと期待される。観光部門はこの地域における国々のGDP10%以上を占め、労働集約的な部門であることから、雇用創出に大きく貢献している。
長期的なリスク
今後の展望としては、観光ブームが欧州の経済成長を支え続けるかどうかは定かではない。世界規 模で複数のリスク(マクロ経済、金融、社会、政治)が存在し、インフレの世界では、南欧が新興国の新進デスティネーションに対してコスト競争力を維持するのは難しいだろう。また、気候変動によって 夏季には高温にさらされる南欧地域は、観光客を呼び込むには大きなマイナス要素を抱える。