AIの活用が企業の意思決定プロセスに浸透するなか、企業には、技術がもたらす可能性と業務上の制約、リスク管理、そして価値創出との最適なバランスを取ることが求められています。データ品質、ガバナンス、AIエージェント、人間の専門知識。今後数年にわたり組織のあり方を大きく変える重要な技術と戦略について解説します。
AI活用を長期的な企業価値の創出につなげる
人工知能(AI)は、もはや実験段階の技術ではありません。日常業務のさまざまな場面で活用が進むなか、企業にとって重要なのはAIを導入するかどうかではなく、どのようにAIを全社的かつ持続的に活用していくかという点です。一方で、AIに寄せられる期待と実際の活用成果との間には依然としてギャップがあります。AIは多くの企業戦略の中心に据えられているものの、意思決定プロセスへの組み込みはまだ限定的で、十分に活用されていないケースも少なくありません。
コファスがLes Echos Etudesと共同で900人の経営層・意思決定者を対象に実施した最新のData & AI Barometer 2026では、AI活用の成熟度は企業規模によって大きく異なり、企業規模が大きいほどAIが意思決定に深く組み込まれていることが明らかになりました。AI活用が進んでいると回答した企業は、中堅・大企業で3分の1に達する一方、中小企業では10社に1社にとどまっています。また、回答者の3分の2は自社データを信頼しているものの、3分の1は事業ニーズやリスク管理、意思決定支援ツールとの整合性に課題があると認識しています。
企業におけるAI活用を本格化させるうえで、データ品質はこれまで以上に重要な成功要因となっています。高品質なデータは、業務のスピード向上と効率化の実現を支えます。
一方で、Data & AIプロジェクトを構築・運営するためのリソースや専門人材、組織的な推進力は、大企業に優位に働く傾向があります。そのため、AI活用が高度化・体系化するにつれて、中小企業がその差を埋めることは一層難しくなる可能性があります。
と、コファス西ヨーロッパ・アフリカ地域 企業情報部門ディレクター Nesrin Goninは述べています。
データガバナンスなくして、AIの真価は発揮できない
企業規模や業種にかかわらず、AI活用の拡大と価値創出はデータ品質に大きく依存しています。どれほど高性能なAIであっても、古くなった情報や分断されたデータ、定義が曖昧なデータの問題を根本的に解決することはできません。それにもかかわらず、コファスの調査によると、企業の60%は正式なガバナンス体制を整備しないままAIを利用しています。AI活用が本格化するなか、管理体制の構築は急務となっていますが、多くの企業では依然としてデータガバナンスの整備が十分に進んでいません。そのため、AI活用は早い段階で限界に直面し、期待した成果を得られないケースも少なくありません。
効果的なデータガバナンスには、信頼性の高いデータ、リアルタイムで更新されるデータ、事業ニーズに沿ったデータ基盤、そして共通のセマンティックレイヤーの構築が不可欠です。これは、各指標について共通の定義と利用ルールを組織全体で共有することを意味します。実務上、同じデータであっても、リスク管理、財務、調達、営業といった部門ごとに異なる解釈がなされることがあります。そのため、データの意味や利用方法を統一することが、AI活用の前提条件となります。
AIはデータの価値を高める一方で、その欠点も浮き彫りにします。AIの活用が組織全体へ広がるなか、データの管理方法や利用ルール、責任の所在を明確にすることがますます重要になっています。
データガバナンスはもはや補助的な課題ではありません。AIを活用して持続的な価値を生み出すための前提条件です。
と、Samia Boujatioui, Group Head of Data Management – Coface Data Office は述べています。
事業との連携と技術革新:より迅速かつ的確な意思決定へ
企業におけるAI活用を次の段階へ進める鍵として期待されているのが、企業データと連携するAIエージェントです。その活用によって、例えば次のようなことが可能になります:
顧客ポートフォリオのデータを直接分析する
リスク状況が悪化している企業を特定する
トレンドを説明したり、類似するビジネス機会を特定したりする
こうした進化は、企業が抱える現実的な課題に応えるものです。意思決定者のほぼ半数は、AIを活用して明確かつ実践的な示唆を得たいと考えています。ただし、それは意思決定をAIに丸投げすることを意味するものではありません。例えば財務部門では不正検知の強化や顧客リスクの予測精度向上への期待が高く、営業部門では新規市場の開拓にAIを活用したいというニーズが高まっています。
今後、競争優位性を左右するのは、単に大量のデータを保有している企業ではありません。事業部門のニーズとテクノロジーの性能・安全性を適切に結び付け、組織全体で統一されたガバナンスを実現できる企業こそが優位に立つでしょう。
Data & AI変革を成功させた企業を他社と分けるのは、保有するデータを具体的な意思決定につなげ、より迅速かつ効果的な判断を通じて、競争優位性を生み出す力です。
と、Nesrin Gonin は述べています。
確かな意思決定で、一歩先を行く
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