世界経済は2025年前半における貿易の混乱を乗り越えましたが、今後数四半期にわたり、その長期的な影響が広がることが予想されます。2025年10月版の「コファスリスクレビュー」では、世界的な動向を分析し、社会的・政治的リスクの高まりや、湾岸諸国が直面する戦略的課題に焦点を当てています。
コファスは今回の評価見直しにおいて、国別リスク評価で5件(うち4件は格上げ)、業種別リスク評価で16件(うち9件は格上げ)の変更を実施いたしました。
主な動向:
· コファスによる世界経済成長率の予測は2025年は+2.6%、2026年は+2.4%
· 先進国における企業倒産件数は2025年前半に4%増加
· コファスの政治・社会リスク指数が過去最高の41.1%を記録(パンデミック前の平均と比較して+2.8ポイント)
· 湾岸諸国のGDPの70%が非石油部門からの収益に(2024年末時点)
新たな関税の衝撃を吸収する世界経済
2025年夏は貿易協定の締結と、米国による関税の段階的な引き上げが特徴的でしたが、世界経済は予想外の回復力を示しています。米国の平均関税率は現在約18%で、解放記念日直後に36%のピークを記録した後、バイデン政権下で見られた2.5%を大きく上回る水準となっています。企業はこうした変化を事前に予測し、方向転換を図り、衝撃を吸収することに成功してきました。また、米国経済は人工知能分野への旺盛な投資によっても支えられています。しかしながら、米国ではすでに経済活動、雇用、インフレに関して初期的な悪影響の兆しが見られ始めており、関税措置による負の影響が徐々にマクロ経済全体へ波及しつつあることを示唆しています。
コファスは、2025年の世界経済成長率を2.6%(わずかに上方修正)、2026年を2.4%と予測しています。米国経済は、内需の支えもあり、現時点では予想以上に堅調に推移しています。一方で、中国経済は減速傾向が続くと見られ、ドイツで小幅な回復が見込まれているものの、ユーロ圏の成長は引き続き低調な状態が続く見通しです。世界的な景気減速とエネルギー・食料品を中心とした商品価格の下落を背景に、インフレ圧力は引き続き低水準にとどまっています。ただし、米国のインフレ率の推移については依然として不透明感が残っており、2025年末から2026年初頭にかけて約4%となることが予想されています。中央銀行の動向としては、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げサイクルを再開した一方で、欧州中央銀行(ECB)は、預金金利を2%に設定した後、景気が大幅に悪化しない限り、利下げサイクルを終了したと見られています。
地域別に見ると、インドは2025年前半に7.6%という顕著な成長率を記録しており、ポーランドも3.4%の堅調な成長を維持しています。また、アフリカの経済見通しも改善しており、2025年には4.1%の成長が見込まれています。一方で、地政学的リスクの高まりや、一部の国で導入された財政引き締め策の影響を踏まえると、経済情勢には依然として不確実性が残っています。
企業倒産の増加、最前線に立つ欧州とアジア
2025年に入ってからも、企業倒産の増加傾向は続いています。先進国全体の倒産指数は2024年と比較して4%上昇しており、特に欧州で11%、アジア太平洋地域で12%と顕著な増加が見られる一方、北米では安定した水準を維持しています。2026年には、金利の低下や資金調達環境の改善により、一定の緩和効果が期待されるものの、現在の傾向は、高コストや不透明な需要に直面する企業の脆弱性を浮き彫りにしています。
政治・社会リスクの高まり、不安定な状況が新たな常態に
コファスの政治・社会リスク指数は、パンデミック時のピークを上回る41.1%という過去最高水準に達し、政治リスクが世界経済における重要な構造的要因として定着しつつあることを示しています。主要な紛争は依然として継続しており、特にアフリカ(ブルキナファソ、ニジェールなど)、パキスタン、レバノンでは国内の緊張が高まっています。米国では、制度的な脆弱性の拡大やポピュリズムの台頭により、リスクの上昇幅が最も大きくなっています。欧州では、フランスが重大かつ前例のない政治危機に直面しています。
こうした状況の中、企業は一層の警戒を求められており、戦略を継続的に見直し、適応させていく必要があります。
原油市場で影響力を再構築する湾岸諸国
湾岸協力会議(GCC)諸国は、経済の多角化が加速する中で、依然として最も活気ある地域の一つであり続けています。2024年末までに、非石油部門がGDPの約70%を占める見通しです。GCC諸国の経済成長率は、2025年に3.8%、2026年には4%に達すると予測されており、内需の拡大や、サウジアラビアの「ビジョン2030」をはじめとする公共主導の取り組みによって支えられる見込みです。
アラブ首長国連邦(UAE)およびサウジアラビアは、2024年にそれぞれ460億ドル、320億ドルという過去最高水準の外国直接投資(FDI)を呼び込み、グローバルなバリューチェーンへの統合を一層強化しています。一方で、依然として化石燃料への依存が続いており、原油価格の長期的な下落が財政を圧迫し、複数の大型プロジェクトの進捗に遅れをもたらす可能性も懸念されています。
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