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コファス アジア太平洋地域(APAC)支払動向調査2026: シンガポール企業、支払遅延の悪化が改善の2倍超

コファス アジア太平洋地域(APAC)支払動向調査2026によると、シンガポール企業の支払状況に悪化の兆しが見られています。過去1年間で、支払遅延の発生頻度と深刻度の双方について、改善したと回答した企業を大きく上回る企業が悪化を報告しており、支払規律の低下が鮮明になっています。

  • シンガポール企業の49%が支払遅延の増加を報告。過去1年間で支払状況の改善を実感した企業は21%にとどまり、悪化した企業数が2倍以上となった。
  • 57%が顧客の支払不履行を経験。アジア太平洋地域(APAC)平均の45%を大きく上回った。
  • 建設業で最長の支払遅延を記録。平均支払遅延日数は85日と、シンガポール全体平均の66.3日を上回った。
  • 52%が今後の支払環境の悪化を予想。特に小売業と化学業界において慎重な見方が目立った。
  • 54%が支払遅延の漸進的な悪化に対する初期対応の不足を指摘。より早期のモニタリングと対応の重要性が示された。

調査では、シンガポールの回答企業の49%が支払遅延の発生頻度が増加したと回答した一方、減少したと回答した企業は21%にとどまりました。また、42%の企業が支払遅延の深刻度が高まったと回答し、改善したとする企業は23%でした。

一方で、シンガポールの平均的な支払条件や支払遅延期間は、依然としてAPAC地域平均をわずかに下回っています。企業が顧客に設定する平均支払期間は69日で、APAC平均の70.2日より短く、平均支払い遅延期間も66.3日と、地域平均の68.1日を下回りました。しかし、支払遅延そのものは依然として広く見られています。過去12カ月間に顧客からの支払遅延を「時折」または「頻繁に」経験したと回答したシンガポール企業は55%に達し、APAC平均の57%とほぼ同水準となりました。

また、中小企業と大企業との間では、支払条件に大きな差が見られました。中小企業の平均支払期間は38日であったのに対し、大企業では一般的に2~3カ月の支払期間が設定されていました。これは、中小企業が長期化する売掛金の回収待ちに対応できる資金的余力が比較的限られていることを示していると考えられます。

今回の調査結果は、シンガポール経済が底堅い成長を維持する一方で、業種によって明暗が分かれる状況の下で明らかになったものです。2026年第2四半期のシンガポール経済は、電子機器および精密エンジニアリング分野の力強い成長に支えられ、前年同期比5.7%の成長を記録しました。しかしその一方で、化学業界など一部の産業では、原材料供給の混乱や地政学的な不確実性の長期化を背景に、生産活動の縮小が見られました。

「シンガポールの経済見通しは、AI関連需要の拡大に支えられた2026年上半期の成長を反映する一方で、業種間で明暗が分かれる状況を示しています。こうした二極化した経済環境の中、支払遅延の頻度や深刻さの増加を実感する企業が増えており、顧客の支払不履行が企業の資金繰りに大きな影響を及ぼすケースも見られます」と、コファス アジア太平洋地域 チーフエコノミストのBernard Awは述べています。「業種によって事業環境には大きな差があるため、企業は取引先の信用状況を継続的に注視するとともに、キャッシュフロー管理の強化に努めることが重要です」

シンガポールで高まる顧客の債務不履行リスク

過去12カ月間に顧客による債務不履行を少なくとも1件経験したシンガポール企業は57%に達し、APAC平均の45%を大きく上回りました。

また、一部企業では財務への影響も深刻化しています。債務不履行を経験したシンガポール企業の31%は、その影響額が総売掛債権の10%超に及んだと回答しており、APAC平均の28%を上回りました。一方で、影響額が売掛債権の5%以下にとどまった企業は49%で、APAC平均の54%を下回っています。

建設業界で最長の支払遅延

支払状況は業界によって大きく異なりました。建設業界の平均支払遅延期間は85日と全業種で最も長く、シンガポール全体の平均である66.3日を大幅に上回りました。これに対し、ICT業界は69日、自動車・モビリティ業界は67日となりました。

こうした結果は、シンガポールの建設市場が引き続き拡大していることを背景としています。シンガポール建築建設庁(Building and Construction Authority、BCA)は、2026年の建設需要が470億~530億シンガポールドルに達すると予測しています。

旺盛な建設需要は業界に新たな成長機会をもたらす一方で、受注案件の増加に伴い、元請企業や下請企業では運転資金の確保がこれまで以上に重要になります。また、建設プロジェクトは工期が長く、支払プロセスも複雑化しやすいため、業界各社にとって売掛債権の適切な管理と回収状況の継続的なモニタリングが重要な課題となっています。

取引関係重視の姿勢がリスク対応を遅らせる傾向

シンガポール企業の支払リスク管理においては、取引先との関係性が依然として大きな影響力を持っています。調査では、74%の企業が長年の取引関係の存在が支払遅延に対する許容度に影響すると回答しました。また、84%の企業は、財務面で懸念材料が見られる場合でも、取引関係への配慮が優先されることがあると答えています。

こうした結果は、多くの企業が顧客の財務状況悪化の兆候を認識していても、実際の対応に移るまでに時間を要している可能性を示しています。支払遅延が約30日間繰り返された場合に直ちに警戒シグナルとみなす企業は11%にとどまりました。一方で、支払条件の見直しや与信管理の強化に踏み切るまで、支払遅延が60日を超えるのを待つ企業は65%に達しており、APAC平均の47%を大きく上回りました。これは、シンガポール企業が取引関係の維持を重視するあまり、信用リスクへの対応が後手に回る傾向を示している可能性があります。

既存の取引関係や過去の支払実績にとらわれず、より早い段階でリスクの兆候を捉えて対応することが企業に求められています。調査によると、顧客の信用リスクを評価する際、80%の企業が財務情報を一定程度以上活用していると回答しました。しかし、財務情報の活用には課題も残っています。開示される情報が十分でないケースや、企業間で報告基準が統一されていないことに加え、中小企業では財務報告の質や情報量が限られる場合もあり、こうした要因が財務情報の有効性を低下させる可能性があります。

「長年にわたる取引関係は、シンガポールのビジネス慣行において重要な役割を果たしています。しかし、信頼だけに依存するのではなく、最新かつ客観的な情報に基づいて判断することが不可欠です」コファス シンガポールの最高経営責任者(CEO)兼カントリーマネージャーのGrishma Kewadaは、このように語っています。「経済の先行きに対する不透明感が強まる中、顧客の過去の支払実績だけでは、現在直面している財務上の課題や事業環境の変化を十分に把握できない場合があります。財務情報に加え、支払行動の変化といった早期の警戒シグナルを併せて分析する企業は、潜在的なリスクをいち早く察知し、適切なタイミングで対応を講じることができます。その結果、支払遅延がより深刻な損失へ発展するリスクの低減につながります。」

シンガポール企業に求められているのは、従来の財務データだけに依存するのではなく、顧客の支払行動の変化や支払期限延長の依頼、取引上のトラブルや紛争の増加といったさまざまな兆候を継続的に把握し、顧客の信用リスクをより多面的かつ最新の情報に基づいて評価することです。さらに、調査では52%の企業が今後1年間で支払環境の悪化を見込んでいます。このような状況下では、潜在的なリスクを早期に察知し、適切なタイミングで対策を講じることが、キャッシュフローの安定化と損失リスクの抑制に向けて、これまで以上に重要になるとみられます。

コファス アジア太平洋地域 支払動向調査2026について

コファスが毎年実施しているアジア太平洋地域支払動向調査の第16回調査は、2026年3月から4月にかけて実施された。本調査では、複数の業種およびアジア太平洋地域10市場において、2,800人の財務担当者から回答を収集し、このうちシンガポールからは152人が回答。本調査では、支払行動の変化、流動性への圧力、顧客の支払不履行、および早期警戒指標を分析するとともに、支払リスクに対する企業のレジリエンス強化につながるガバナンス、分析体制、エスカレーションの枠組み、顧客対応の実務について評価している。

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