ブレグジット・ショックをきっかけとするさらなる格下げと、減少する石油収益

- 世界的な経済成長:先進国では安定、新興経済国ではやや改善
- 歴史的なアルジェ合意にもかかわらず、石油は依然として重要な問題に
- コモディティ価格の下落の影響を受けた国では4つの格下げ
- 欧州では政治的な及び金融のリスクが上昇
- ブレグジット後の不安定性:英国はA3へ格下げ
さらなるオイル・ショックの犠牲者
世界経済の見通しが極めて不透明であることが、企業の経営状態にも重くのしかかっている。引き続き、2つの主な要因が情勢に影響を及ぼし続けている。
まず、国際貿易が低水準にとどまっているということは、経済成長の力強い回復の見込みが薄いということである。内需が低迷し続けているユーロ圏のような先進諸国においては、2016年には1.6%、2017年には1.5%と、当面は安定成長が見込まれる。米国の現状は、企業にとって新たな雇用機会を創出するという追い風にはなっていない。日本では、鈍い民間投資を埋め合わせるための財政政策が次々と取られているにもかかわらず、引き続き見通しは切迫している。しかし、新興経済国では回復も予想されており、2016年には3.7%、2017年には4.2%のGDP成長が見込まれる。ブラジルとロシアの両国の経済も底を打ち、財務指標と低インフレが回復するなど、2017年には不況を抜け出すと思われる。
第二に、新興経済国においては石油価格が依然として重要な問題となる。割当量に関する歴史的なOPEC合意にもかかわらず、Brent指標は緩やかな増加しか示さないものと思われ、コファスでは2016年に44米ドル、2017年に51米ドルという数字を予測している。需給の均衡が回復するまでには相当の時間がかかるだろう。この観測により、コモディティ依存度の高いいくつかの国ではさらなる格下げが行われた。
- オマーン(B)は公共支出が急激に減少しており、投資に影響を及ぼしている。
- トリニダード・トバゴ(B)は、天然ガスと原油の生産量の激減に直面している。さらに悪いことに、いくつかの油田は期限と生産現場のメンテナンスの時期を迎えている。
- ナイジェリア(D)は景気後退期にあり、外貨準備高が激減している。これは、輸出の難しさによる工業生産高に影響を及ぼしている。
- モンゴル(D)は、同国の輸出の90%以上を引き受ける中国経済の減速と、コモディティ価格の低迷の影響を被っている。モンゴルは国際収支の危機に直面している。
英国は、ブレグジットを巡る不確実性により格下げされた
欧州は政治的な及び金融のリスクにより不安定化している。
政治的リスクはギリシャ、スペイン、イタリアなどにも残っているものの、引き続き欧州における最大の問題はブレグジットである。英国の経済成長は今年1.9%に達する可能性があり、イングランド銀行も8月に貸し出し基準金利を引き下げ、EUとの話し合いを有利に運ぶシナリオを用意しているが、それでも2017年の成長率は0.9%がせいぜいと予想される。さらに、家計に占める高い住宅ローンの割合(その時点での収入の132%)と34.6%もの価格の過大評価に特徴づけられる不動産セクターにおけるリスクも注視が必要だ。このように、極めて不透明な状況にあり、さらにEUを離脱する条件もまだ確定していない現状で、英ポンドは大きく変動しており、特にドルに対して大幅に値下がりしている。
この短期的な見通しの悪さは、英国経済だけでなく欧州全体のマインドに重くのしかかっている。したがってコファスは、英国の評価をA3に格下げした。一方、10月には対ドルで31年ぶりの安値を記録したほどの急激なポンド安の恩恵を被る企業もあるだろう。このポンド安は輸出を押し上げたものの、一方で消費者支出はインフレの影響で圧迫されている。
ブレグジットが進むにつれ、特に今夏のストレステストの結果を受け、一部の銀行については経営の健全性に対する懸念が膨らんでいる。これらのテストは、特にイタリアとドイツにおける、12を超える銀行が直面している困難に焦点を当てている。
レポートをダウンロード:カントリーリスクバロメーター2016年第3四半期Q3
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