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2015.09.16
カントリーリスク&経済レポート

湾岸協力会議(GCC)諸国:同じショックに対するさまざまなリアクション

湾岸協力会議(GCC)諸国:同じショックに対するさまざまなリアクション

ハイライト

  • 石油価格の急落で浮き彫りになった経済多角化の重要性
  • バーレーン及びオマーンなどのように財政的な余裕が小さい国々は、成長パフォーマンスの低さに関連した問題に悩まされている
  • サウジアラビア及びアラブ首長国連邦(UAE)は、非石油貿易を促進する戦略が進行しているため、石油価格下落による影響が比較的小さい
  • 民間消費及び持続可能な経済成長を支援する政府の取り組みにより、GCC諸国の展望は依然としてポジティブである
  • GCC諸国の成長率は2015年が3.4%、2016年が3.7%と予想される

 

今日、GCC諸国は世界の確認石油埋蔵量の30%を抱えている。首位はサウジアラビア(15.7%)、これに続くのがクウェート(6%)、アラブ首長国連邦(UAE、5.8%)である。GCC諸国を合計すると、2014年は日産2860万バレルであり、これは世界全体の石油生産量の32.3%に相当する。石油価格下落はGCC諸国すべてに影響を与えているが、その深刻度はさまざまである。石油価格下落が最も大きな打撃を与えているのはオマーン、バーレーンだが、サウジアラビア王国、クウェート、カタールに対する影響はそこまで大きくない。

 

石油価格下落への耐性を示している国は、多角化の進展、健全な財政的余裕、より明確な国際貿易への統合といった、しっかりしたマクロ経済的ファンダメンタルズを活かしている。これらの市場では製造業・サービス業が発達しているため、石油収入への依存度が低いのである。

 

経済実績に占める石油の比重

GCC諸国の成長率は、2015年が3.4%、2016年が3.7%と予想される。他の新興市場諸国に比べればこの成長率は高いように思われるが、2000年から2011年までの同地域の平均成長率5.8%に比べればやはり低い。減速の理由は石油価格の低下であり、2014年半ばの1バレル約110ドルから、2015年には1バレル50ドルまで下落した。政府支出が増大するなかで石油価格下落が重なったことはGCC地域に打撃を与えているが、すべての市場が同じパターンで反応を示しているわけではない。経済構造に類似性はあるものの、経済規模、人口、多角化のレベル、財政面から見た採算価格という点では開きがある。

 

UAE:石油価格低下への耐性あり

UAEはGCC諸国のなかでも最も経済の多角化が進んでいる国の一つであり、石油価格下落にも耐性を示している。炭化水素関連収入はGDPの25%、総輸出収入の20%に相当している。民間の非石油部門は、ドバイを中心に、国内需要と観光に牽引されて力強い成長を見せている。ドバイ・エアポーツによれば、2015年第1四半期のドバイ国際空港の利用乗客数は7%増の1960万人となり、2020年のドバイ万博に合わせて、観光客の流入はさらに伸びると期待されている。

 

国内需要は、順調な小売販売額と景況感の改善に支えられている。ドバイの小売販売額は2014年に7%の伸びを示したが、観光客数が増大したことにより、さらに上昇するものと試算されている。ドバイの不動産市場は外国からの投資及び近隣のアブダビからの富の流入により活況を呈している。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サウジアラビア:多角化プロセスを加速

輸出収入の80%、歳入の約85%を石油部門から得ているとはいえ、サウジアラビア王国は多角化プロセスを加速している。経済成長の主な牽引役は、民間消費の活性化をめざした強力な財政出動と、2014年に6.7%の成長を記録した建設部門である。政府が輸送インフラ、エネルギー、ユーティリティ、住宅整備といったプロジェクトへの投資を計画していることから、建設産業は2015年にも成長が見込める。2015年はじめ、サウジアラビア総合投資庁は、投資推進のため、四つの部門別アプローチを含む「国家統一投資プラン」を発表した。計画には、エネルギー部門の統合、建設、観光、不動産、小売の各部門における生産性向上、鉱業及び輸送部門開発の加速、国としての競争力強化に向けた教育への投資強化などが盛り込まれている。医療部門では医療ハードウェア・機器の製造、薬品、ワクチン製造、病院の建設運営など、40件、総額710億ドル規模の有望な投資機会がある。また、バス、鉄道車両及びスペア部品の製造、インフラの創出・開発に向けた専門的・技術的支援サービスの提供など、魅力的な輸送関連投資プロジェクトも36件が進行中である。また政府は国家公務員に対する月給2ヶ月分の賞与支給、53億ドル相当の電力・水道料金・住居費補助などにより消費支出を支援することをめざしている。この投資によって、小売販売を中心に消費が刺激され、石油価格下落が所得に与える悪影響を部分的に相殺している。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多角化とグローバル統合

GCC諸国経済は依然として主要な輸出品、収入源として石油に依存している。しかし各国政府は、石油部門への依存を減らすことを狙い、経済多角化政策を通じてこの成長モデルを改めようと努力している。炭化水素部門からの収入は、補助金及び政府支出といった形で非炭化水素部門の成長を推進するために利用されてきた。サウジアラビア、UAE及びカタールは、近隣のGCC諸国に比べて経済の多角化に成功を収めてきた。

 

GCC諸国の多くは、サウジアラビアの「ストラテジー2025」、オマーンの「ビジョン2020」、UAEの「ビジョン2021」、バーレーンの「ビジョン2030」、カタールの「国家ビジョン2030」といったように、長期経済プランを実施しつつある。結果として、GCC諸国の実質GDP全体に占める非石油部門のシェアは、12%から70%へと上昇した。各国当局は経済成長を促すために、貿易推進措置を導入し、より多くの対外直接投資を誘致しようとしている。GCC諸国はどこも世界各国との緊密な商業関係のもとで経済を開放している。国際金融協会(Institute of International Finance)によれば、GCC地域の総輸出額はGDPの60%以上に相当した(2014年)。GCC地域にとって主要な輸出先は、アジア、欧米、中東、北アフリカ、トルコである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個別の部門に見るUAE及びサウジアラビアの経済的な回復力

コファスでは、UAE経済の食品・飲料部門は、高所得層からなる国内市場、堅調な個人消費、増大する需要を抱える国外居住者、順調な経済成長、そして安全な避難先としてのこの国のポジションといった要因による追い風を受けるだろうと評価している。UAEは食品加工産業への投資を進めており、1994年以来、酪農産業を中心に総額14億ドルに達している。[イスラムの教義に沿った]「ハラル」食品市場も拡大を続けており、さまざまな自然食品の選択肢を求める強い消費需要に支えられて、2018年までに1兆6000億ドル規模に成長すると予想されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サウジアラビアで最も有望な産業は自動車部門である。独自の設備メーカーが複数、サウジアラビアに国内事業体を設けている。サウジアラビア公共投資基金(PIF)は、総工費10億ドルの自動車製造プラントに投資しており、2018年までに年間15万台の生産能力を備える予定である。乗用車部門は可処分所得の上昇、有利な人口動態、都市化の加速によって、2015年には3.6%の成長となる見込みである。

 

 「GCC諸国では引き続き石油が経済パフォーマンスに大きく貢献するでしょうが、湾岸諸国にとって、健全な成長を引き続き確保するためには、経済の多角化が不可欠となっています。これはサウジアラビア及びUAEの例に見るとおりで、両国は非石油部門に大きな政府投資を行うことにより、持続的なGDP成長を推進しています。UAEでは食品・飲料部門が2014年から2019年までの間に36%成長すると予想されています。一方、サウジアラビア王国では、自動車産業が2015年に5.2%成長する見込みです。

 こうした成長率の数値に鑑みて、サウジアラビアとUAEは、石油価格下落の影響を相殺し、成長を促進し、財政赤字を避ける手段として、経済の多角化の重要性を示すポジティブな実例となりつつあります」(コファスMENA地域担当エコノミスト、Seltem Lyigun)

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