フランス経済:成長は踊り場に

- 外的なショックに影響された第2四半期
- 2016年の予想成長率は1.6%と引き続きポジティブ
- 非金融企業の債務水準:欧州では珍しい上昇傾向だが、警戒水準ははるかに下回る。
- 企業倒産件数は引き続き減少傾向:2016年は3.4%減少。
- セクターリスクは安定:12セクターのうち、農産食品産業は格下げ、自動車産業は格上げ。
政治的緊張という背景のもとでも回復は加速
フランス経済は、第2四半期に外的なショックの影響を受けたものの、ポジティブな傾向を維持している。イル・ド・フランス地域の洪水被害により、この地域では短期的にビジネス活動の減速が生じた。しかし長期的に見れば、この自然災害という要因は、特に建設セクターにおいて復興ニーズのために受注残が急速に積み上がっていることから、雇用回復の契機になるだろう。石油精製産業におけるストライキも、双子の影響を及ぼすだろう。つまり、短期的なショックではあるが、中期的にはポジティブな影響を与える。さらなる品薄を避けるために、大規模な在庫補填が行われるからだ。さらに、欧州における政治的な不確実性によって、市場のボラティリティが上昇している。スペインの政治的混乱、レンツィ内閣を脅かしているイタリアで行われる予定の国民投票、そしてブレグジットと、フランスの主要貿易相手国3カ国が現在政治的リスクの源となっており、市場を動揺させている。この要因からも、今後の数四半期、フランスの経済成長が実質的に国内主導・自律的なものになっていくことは確実である。
このポジティブなトレンドは、失業率の着実な低下(INSEE(フランス国立統計経済研究所)によれば10%以下に低下しており、国際的なレベルでは国際労働機関によっても確認されている)によって支えられている。民間消費支出は、ホテル産業における回転率の低下及び商業サービスにおける全般的な減速にもかかわらず、大幅に伸びている。
企業倒産件数は引き続き減少、ただし第2四半期には踊り場の局面も
企業倒産件数は、第2四半期に踊り場の局面が見られたが、フランス経済の状況と並行して、今年も減少傾向が続くと見られる。ホテル産業及び運輸セクターは、特にイル・ド・フランス地域において、経済のウーバライゼーションによる打撃を受けている。この地域は、全国の企業倒産件数のうち21.4%を占めており、2016年には最も厳しい打撃を受けた地域の一つになるだろう。7月末時点では、企業倒産件数の5.4%増加が記録されている。新規法人向けローンの増大が年間の平均倒産率の低下に貢献しており、2016年の-3.4%という予想を確かなものとしている。
企業債務:欧州主要国のなかでフランスだけが増大
欧州主要国のなかで、企業債務水準が上昇傾向を示しているのはフランスだけ(2008~2016年で14.8パーセンテージポイントの上昇)だが、依然として90%という危険水準をはるかに下回っている(68.7%)。
この特有のトレンドは、二つのフェーズに分けて説明できる。
- 2007~2013年には、企業は金融危機の影響を相殺するために債務比率を大幅に挙げなければならなかった。十分なキャッシュフローを生み出すうえで、需要と利益率があまりにも低かったからである。
- 2013年から今日にかけては、キャッシュフローは回復しているものの、企業は非常に有利な金利、アウトフローの改善(消費・投資の増大)、マイナス金利でさえ借入可能な市場における高い投資意欲(Sanofi)といった恩恵を受けており、社内留保を取り崩さずに投資を行う意欲が高まっている。
農産食品産業は「高いリスク」に格下げ、自動車セクターは「低いリスク」に格上げ
フランスにおけるセクターリスクは安定しているが、第1四半期と同様の流れは続いている。
- 繊維・衣料産業は5月に「高いリスク」へと格下げになり、企業倒産件数の増大と利益率の低下という問題を抱えている。
- 農産食品産業では、企業倒産件数が3.2%増加した。農家は収穫の不振による打撃を受けている。特に穀物生産農家においては、世界各国がおだやかな気候による恩恵を受けたために価格上昇が見られなかった。同セクターは「高いリスク」に格下げとなった。
- 自動車セクターは販売台数の増加により状況がさらに改善している。販売台数は依然として危機以前の水準には戻っていないものの、回復の加速が期待されている。そのため、同セクターは「低いリスク」に格上げとなっている。
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