159カ国におけるコファスの新しい政治的リスク指標

政治的リスクの幅広い上昇が、複雑な地域力学の経済力を覆い隠す
- 指標は2013年から上昇し続けている
- 二つの主要なリスクが考慮されている:安全保障リスク(紛争やテロ)と、政治的・社会的脆弱性である。前者は、企業がその活動を実施するのを直接的に妨げ、後者は景況感などを通じてより間接的な影響を及ぼす
- 紛争のリスクは2007年から2015年の間に倍増した
- テロに関するリスクの上昇(2008年から2.8倍増)は、紛争の国際化が進んでいることを示している
- 先進経済の具体的な指標変数はポピュリズムの台頭を考慮に入れる
現在の状況に根差す政治的リスクを数量化する完全な国際的指標
西ヨーロッパ(2016年)及び 新興市場諸国(2013年)限定の政治的リスク指標に続き、コファスは159カ国をカバーする国際的な指標を発表する。安全保障リスク(紛争及びテロ)と政治的・社会的リスクという二つの主な構成要素を組み合わせることで、政治的リスクの完全なランキングが可能になる。
中東及び北アフリカのスコアは高く(アフガニスタン、イラク、リビア、ナイジェリア:100%)、2010年から上昇傾向にある(レバノンについては22ポイント増、エジプトについては20ポイント増)。サブサハラ・アフリカにおいては、投資家を思いとどまらせる紛争のために、リスクは2013年以降上昇を続けている:ナイジェリアでは36ポイント増(2013年比でFDIが-30%)、中央アフリカ共和国では28ポイント増(コートジボアールが6ポイント減とやや改善を示していることに注目)。
独立国家共同体諸国も、やはり平均を大きく上回っている。これは、ロシア(2ポイント増)及びウクライナ(41ポイント増)のスコアの悪化だけが原因ではない。タジキスタン(10ポイント増)及びアゼルバイジャン(8ポイント増)の政治的・社会的脆弱性にも、リスクの増加が示されている。
社会的脆弱性が高まっているラテンアメリカは、増加傾向にある(メキシコで25ポイント増、ベネズエラで9ポイント増)。
アジアにおいては傾向はまちまちであるが、例外は二つの大国で、中国は10ポイント増、インドは増減なしとなっている。他については、政治的リスクは2010年以降、少しずつ改善してきている(スリランカで60ポイント減、ネパールで25ポイント減)。
指標の三つの構成要素が、リスクが広がっていることを示している
- 紛争指標
紛争指標は紛争の発生、その激しさ、そして関与する主体の種類などに基づいている。戦乱状態にある国が、ランキングのトップを占める:アフガニスタン、イラク、スーダン、ナイジェリア、シリアである。また、カルテル戦争のためにメキシコ。、そして、コロンビア。、アルジェリアとインドも、リスクの高さで際立っている。
- テロのリスク
安全保障リスクは、2008年と比較して2.8倍に増えたテロ指標を考慮に入れずには考えられない。これは、事業、家庭、そして海外投資などの景況感に影響すると考えられる。いわゆるイスラム国との戦いに関与しているOECD諸国のほとんどは、2011年から2015年までの間にスコアが上がっている。先進国の中ではフランスがトップで、77%(24ポイント増)のスコアとなっている。米国(23ポイント増)、オーストラリア(27ポイント増)、そしてドイツ(27ポイント増)などでもリスクが高まっている。
- 政治的・社会的脆弱性の指標
政治的・社会的脆弱性の指標は、一方で政治体制、民俗的・言語学的分裂、そして政治及び市民の自由などを、他方で圧力や社会的リスクの手段などを考慮に入れている。ここでも、激しい紛争が起きている国が高いレベルのリスクを示している。2007年から2015年までの間に、その上昇はCISとラテンアメリカ諸国において特に顕著であった。
先進国にはポピュリストの台頭という試練
先進諸国においては、ポピュリズムの台頭を考慮に入れた「マニフェスト」プロジェクトのデータが加わる。これは、選挙の争点(保護貿易主義、安全保障、治安、国家的価値等)別の政治的マニフェストの割合を調べたものである。コファスによる分析では、ポピュリズムの圧力が最も高まっている国は英国(73%)とフランス(70%)で、比較的大きな割合のテーマが治安に結びついている。これに続くのがオーストラリア(64%)とオランダ(63%)で、多文化主義への不信感に関係する割合が高い。
Infographics : New political risk index for 159 countries
COFACE ECONOMIC PUBLICATIONS
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