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2015.03.04
カントリーリスク&経済レポート

国際石油価格の下落がラテンアメリカに与える影響

Latin America is a major producer of commodities and the recent drop in oil prices is impacting the region’s countries in different ways. Which countries could benefit from lower international quotations - and why are others negatively impacted?

石油価格はここ数ヶ月急激に下落しており、2014年6月20日114.81米ドルの高値を付けた後、2015年1月28日には48.47米ドルとなった(図1参照)。57.8%という下落には、生産量の増大と需要の減少が重なったことが関係している。供給サイドでは、近年の米国におけるシェール革命により同国での生産量が上昇しており、過去30年間で最高の水準となっている。一方、主要消費国である中国(石油消費量全体の12%)では、GDP成長の減速により需要が減少している。11月27日にはOPECが生産量を現状で維持する決定を下しており、これが石油価格に対する下降圧力をさらに強めた。このOPECの決定の裏には、相対的な利益率の悪化につながる新規シェール油田への投資を抑止しようという狙いがある。

石油価格がラテンアメリカに与える影響は、この低価格がどれくらい続くかによって変わってくる。またその影響は、域内の国によってさまざまである。

最も大きな影響を受けているのはベネズエラで、IMFの予測では、石油価格が10ドル下がるごとに貿易収支がGDPの3.5%相当悪化するという。コロンビアとエクアドルも石油の純輸出国であるだけに、石油価格の下落から受ける影響がそれぞれ二番目、三番目に大きな国となるだろう。

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対照的に、チリ、ブラジル、アルゼンチン、ペルーは貿易収支の点で好影響を受けるだろう。だが中期的には、石油価格の低下は、アルゼンチン、ブラジルの燃料部門における投資計画に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

各国の図表2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コロンビア、チリ、アルゼンチンに関する予測

 

コファスのラテンアメリカ担当エコノミストPatricia Krauseは次のように述べている。「2015年のラテンアメリカの成長率は改善するはずで、コファスではこの地域のGDPが2.3%増大すると予想しています。展望が改善されているとはいえ、主としてブラジルにおけるスタグフレーションのシナリオゆえに、そのペースは引き続き遅いと考えられます。ブラジルはラテンアメリカの経済活動の大きな部分を占めていますが、同国の経済は、少なくとも短期的には、上向きになる可能性はありません

 

コロンビア 

経済活動は引き続き好調を維持するはずである。インフラへの投資、公共住宅、家計消費を主役とする国内市場に牽引されて成長が続くだろう。2014年のインフレ率は最終的に3.66%となり、目標の中間値である3%を上回った。最近の石油価格の低下によって交易条件は悪化しており、為替相場に影響を与え、物価の上昇圧力が生じている。

 

チリ 

2013年第4四半期以降、経済活動は減速しており、2014年第3四半期には、2009年以来最も遅い成長ペースまで落ちた(前年比0.8%の成長)。この動きは主として銅価格の下落に関連しており、これによって貿易収支と投資計画に影響が出ている。チリでは輸出がGDPの27%を占めており、輸出全体の半分は鉱産資源で構成されている。2014年9月末に法律として発効した税制改革も、企業の信頼感を引き下げる要因となっている。

 

アルゼンチン 

引き続き混乱のシナリオが経過中である。2014年は恐らくマイナス成長となり、インフレ率は40%近くに達している(非公式の資料による)。外貨準備は不足しており、債務不履行の状況はまだ解消されていない。インフレ、雇用市場の悪化、将来のシナリオに対する信頼感の低さを原因とする家計消費の減退により、コファスでは2014年、2015年のGDP成長率をそれぞれマイナス1.5%、マイナス1%と予想している。

 

 

主要部門の詳細

 

  •  チリの鉱業部門

 

銅生産における首位の座は維持されるだろうが、そのシナリオは困難を増している。鉱業部門はチリ経済の大黒柱である。チリは世界最大の銅生産国であり(世界の供給量の3分の1)、金、銀、モリブデン、鉄、石炭も生産している。銅はチリの輸出の50%を占めており、GDPの15%に相当する。このセグメントのパフォーマンスにとっては、生産コストの上昇が脅威となる可能性もある。

 

  •  コロンビアの建設部門

 

石油産業の展望がマイナスであるのとは対照的に、この産業は、力強い経済成長の一方でインフラが未整備であることから、成長機会に恵まれている。コロンビア経済はこのところ好調であり、建設部門も同様である。同国経済の花形の一つであると言えるほどである。

 

  •  アルゼンチンの自動車部門

経済不振のシナリオがこの部門に打撃を与えている。アルゼンチンはラテンアメリカで3番目に大きい自動車市場であり、自動車生産台数では世界23位である。自動車部門はGDPの約5%、工業生産の20%を占めている。だが、現在のアルゼンチンの経済シナリオと、それが消費者の信頼感及び購買力に与える影響により、2014年の活動は不調に終わった。

 

 

 

 

 

  

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TABLE OF CONTENTS:

  • Steep decline in oil prices and its mixed effect on the Latin America region
  • Sectors
  • Conclusion
  • Mining in Chile
  • Construction in Colombia
  • Auto in Argentina

 

 

 

 

 

 

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