ニュース・レポート
2023.04.28
カントリーリスク&経済レポート

原油市場のさらなる引き締め

A further tightening of the oil market

4月上旬、サウジアラビアイラクアラブ首長国連邦クウェートカザフスタンアルジェリアオマーンが、合わせて110万バレル/日(b/d)以上の原油減産を発表し、市場を驚かせました。このコミットメントは、OPEC+が2022年10月に発表した最初の減産に続くものです。また、EUによるロシア産原油および石油製品の海上輸入禁止措置の実施に伴い、ロシアが約50万b/dの減産を決定したことに加えて、この減産が実施されました。

 

合計すると、この減産は世界の需要の約3.7%に相当します。これらの削減は、石油市場の緊張が2023年を通して続くというコファスの見解を補強するものです。生産国の行動が戻ってきたことで、世界経済の成長を巡る不確実性にもかかわらず、待望の価格下落は起こりそうにありません。したがって、コファスは、市場の変動と2023年の価格90ドル/バレルの予測は変更せず、現行通りとします。

 

突然の決定ではあるが、根拠あり

OPEC+の関係者は、原油産出量の調整は必要ないと示唆していたため、減産の発表とその規模は驚くものでしたが、この決定には多くの理由があります。.

 

  • この減額は「石油市場の安定を支えることを目的とした予防的措置」であり、OPEC+は、石油需要の見通しがあまり強くないとみています。最近の銀行セクターの混乱からは、経済環境が油断を許さないことを再認識させられました。コファスもこの視点を共有し、世界のGDP成長率は2022年の3.1%から、2023年には2%に減速すると予測しています。
  • 原油価格は大きく下落しており、ロシアのウクライナ侵攻後につけた139ドルのピークから48%近くも値を下げています。そのため、今回の動きは価格を押し上げることを目的としていますが、多くの石油生産者は80ドル以下の価格を快く思っていないと思われます。
  • 信用状況の悪化、老朽化したシェール盆地での生産性の低下、そして労働力不足などの影響を受けた、米国のシェールオイルの生産量が緩やかな現在、今回の決定は、カルテルが価格決定権を行使できることを再認識させるものです。
  • 最後に、米国間で、戦略石油備蓄(SPR)の利用をめぐる緊張も生じています。ウクライナ戦争後の価格高騰を抑えるため、米政権は前例のない石油備蓄の削減を命じており、削減した備蓄の補充には数年かかると指摘されています。

緊張の高まりは、石油産業の収益を支えるものである一方、世界経済へのリスクはある見通し

EUが原油需要が弱まるなかで、ロシア産原油の海上輸入を禁止したことにより、すでに原油市場は圧力下に置かれていました。この緊張はさらに悪化しており、コファスは、2023年後半に90-110ドルの取引レンジで原油価格が不安定に推移すると予想しています。OPEC+の決定は、中国のより本格的な景気回復とも重なるはずです。中国は世界有数の石油消費国であるため(2000年から2019年にかけての限界消費量の約40%)、経済の回復が早まる、あるいは強くなれば、需給バランスがさらに引き締まり、価格が上昇すると思われます。

 

世界レベルでは、原油価格の上昇圧力はインフレ見通しを一変させる可能性があります。実際、エネルギー価格の低下は、ここ数四半期における先進国のインフレ率低下の主な要因の一つとなっていましたが、2023年後半にはその寄与が逆転し、全体的なインフレ率に再び圧力がかかる可能性が見込まれます。

 

OPEC+の決定は、米国とサウジアラビアの関係拡大をも浮き彫りにしています。米国大統領バイデン氏は、ウクライナ戦争の資金源となっているロシアの収入を制限するため、同国と他のOPEC加盟国に増産を呼びかけました。このため、減産の決定はホワイトハウスにとって受け入れられないことであり、両国間の新たな亀裂となりました。エネルギー政策以外でも、サウジアラビアが上海協力会議に 「対話パートナー」 として参加することに合意するなど、米政権はサウジアラビアと中国の関係深化を注視しています。

 

しかし、今回の発表は、石油・ガス会社にとっては朗報です。彼らのすでに高い収益水準は、価格上昇の恩恵を受けることになる。欧米の石油・ガス会社は、2022年に2190億ドルの利益を報告しています。90ドル/バレルの予測では、コファスは彼らの利益が2023年に約1600億ドルに達すると予想しています。

このプレスリリースをダウンロード : 原油市場のさらなる引き締め (351.55 kB)

お問い合わせ


Japan

コファスジャパン信用保険会社
マーケティング&コミュニケーションズ
 小川 のりこ
 
T. +81 3 5402 6152 
noriko.ogawa@coface.com

トップ
  • 日本語
  • English