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2021.08.03
カントリーリスク&経済レポート

電気自動車による金属ブームは持続可能か?

Is the electric vehicle metals boom sustainable? The photo shows a woman connecting an electric car to an energy source.

電気自動車に使用されるリチウム、コバルト、銅等の金属は、現在、自動車業界で起きている革新の中核となっている。厳格な規制、政府の支援措置や特定の地域での電気自動車の使用増加は全て、バッテリーの製造に不可欠となるこれらの金属の需要を大きく刺激している。電気自動車の市場シェアがまだわずかであるにもかかわらず、需給の不均衡が金属の価格を押し上げている。最新の分析でコファスは、今後2年間、この金属の価格動向に大きな変化はないと予測している。

 

電池の構成が変わっても、もしくはエネルギー源として水素が使われるようになっても、この金属を使用することに対する圧力は減らない。たとえ、この金属を利用するコストが高騰故に、他の代替技術の研究開発が促進されることになっているとしても、である。しかし、これらの取り組みは、長期的には、次世代自動車で優位に立とうとする国々間の強い競争によって状況が変わる可能性がある。

 

電池生産に不可欠な金属が、強い構造的トレンドの恩恵を享受

電気自動車セグメントは世界的に成長を継続的に維持し、市場シェアは2019年の8%に対し、2020年には13%となっている。国際エネルギー機関(IEA)の発表によれば、

  • 2020年の自動車販売台数は6%減少したが、電気自動車の販売台数は41%増加した。これは、欧州が同セグメントに対する強い需要を示したためである。
  • 2021年第1四半期の電気自動車の販売台数は、2020年第1四半期比41%急増し、年間では70%の増加が見込まれている。

加えて、2035年には欧州をはじめとする一部の市場で内燃機関の販売が禁止され、電気モーターとの競争がなくなる。

 

この傾向により、自動車の生産に必要な金属(リチウム、コバルト、グラファイト、ニッケル、レアアース元素、アルミニウム、銅)に圧力が加わる。。バッテリーに使用される金属は、数十もしくは場合によって数百キログラムが使用されており、特にアルミニウムは総重量の約半分を占め、次いで銅、グラファイト、ニッケルがこれに続いている。

 

アルミニウムは、重量面での優位性や、衝突時の保護性能の高さから、バッテリーだけでなく、シャシーや内部パネル等、自動車の他の部品にも使用されている。銅の事例も関心を集めている。銅はバッテリーの生産に不可欠であると同時に、電力供給会社でも自動車の電動化や新たなエネルギー需要に対応するために新しいネットワークを構築することとしても使用されている。

需要の伸びが供給を上回り、生産と価格に圧力

コファスは、2020年から2021年にかけて、ニッケル、アルミニウム、銅の価格がそれぞれ34%、25%、47%上昇すると予想している。さらに、2020 年から 2050 年にかけて需要が大幅に増加すると予想している。電気自動車向けの銅の需要は同期間に年率9.9%で増加するとされており、ニッケルは年率11.8%で増加すると考えられている。

 

需要の高いこれらの金属の産出国は、コンゴ民主共和国(DRC)、オーストラリア、インドネシア、チリ、ロシアなどであり、、各国の政府は、付加価値を得るために鉱業法を改正するとともに、現地の人口を守るために環境規制を強化している。

鉱山・金属企業にとって、供給を改善し、このトレンドに対応するプレッシャーは大きくなるだろう。

 

コファスは、成長を取り込むために設備投資の増加を予想しているが、同セクターの企業は強い収益性を示す必要もあり、これは短期的な課題を露呈している。実際、同セクターは、2020年初頭からコロナ禍によって様々なロックダウンや需要の減少に伴う価格の下落に対する影響を被ってきた。当時の経済の見通しが暗かったため、探鉱や生産能力の拡大の予算が削減されたが、その後トレンドが反転した。

 

依存関係の解消には課題が山積

バッテリーメーカーとその顧客は、コバルトへの依存度を下げると同時に、代替エネルギーの確保にも取り組んでいる。水素は一般に、業界の全体的なコストと環境への負担を軽減することができる強力な代替エネルギーとして挙げられている。しかし、コファスは、政府からの強力な奨励金がないかぎり、この10年間で水素がゲームチェンジャーになるとは予想していない。

 

加えて、自動車メーカー等の様なエンドユーザーを含むバッテリーと関連する企業は、各当局の厳しい規制を遵守するためにバッテリーに多額の投資をしているため、短期的には水素を好まないと予想される。

 

リサイクル及び循環型経済は、需要の増加に対応し、環境への影響を低減するための他の対応策である。電気自動車の使用を開発する取り組みは、パリ協定の目標達成、並びに気候変動防止活動に基づいているが、金属の採掘は他の採掘プロセスと同様に、環境と現地の人口に大きな影響を及ぼす。コンゴ民主共和国では、森林破壊と児童労働が蔓延している。電気自動車革命を正当に評価するためには、このような問題に対処する必要がある。

 

数百万台もの電気自動車が販売される中で、リサイクルは今後数年間の重要な課題となり、多くの企業がこの分野での事業展開を急務としている。コバルトとニッケルのリサイクルは比較的成熟しており、全体のリサイクル率は60%に達しているが、リチウムはほとんどリサイクルされておらず、全体のリサイクル率はわずか1%に過ぎない。そのため、特に電池の廃棄物管理において、改善の余地がある。

 

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