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2019.04.09
カントリーリスク&経済レポート

5年間続いたモディノミクスにもかかわらず、今も経済の脆弱性に悩まされるインド

Despite five years of Modinomics, India continues to be constrained by economic fragilities

ナレンドラ・モディ首相は就任当初の2014年、インド産業部門の競争力を高めることで経済成長を促進させる、と公約した。4月11日から5月19日まで行われるインド総選挙で、モディ氏は再び大統領に立候補する。経済状態は2014年よりも改善されているが、モディ首相が受け継いだ多くの構造的脆弱性は現在も依然としてインドに悪影響を及ぼしており、経済改革の点では必ずしも取り組みがすべて成功しているとは言い難く、モディ氏への支持が弱まる原因となっている。

 

  • インド政府は2016年に、破産に関するあらゆる法を統合した破産法(IBC)を執行し、銀行のバランスシート上の不良資産の問題に取り組んだ。新法導入以来、約12,000件の破産が申し立てられたが、全国会社法裁判所(NCLT)におけるリソース不足のため手続きは大幅に遅れており、依然として破産の決着までには平均で4.3年かかる。法的枠組みを替えることは、インド市場に明るくない海外投資家にとっての障壁にもなり得る。

 

  • 2016年、モディ首相はインド経済を悩ませ、増え続ける人口を支えるための税収減に繋がっている不正な資金の流れと脱税への対策として、高額紙幣を廃止した。この動きにより、現金依存型の部門では流動性が縮小し、その結果として需要が減り公式経済の足を引っ張ることになってしまった。また、あまりにも唐突に実施されたために投資家の間でパニックが生じ、資本の流出を招いた。

 

  • 2017年には政府の歳出を引き上げるために物品サービス税(GST)が導入されたが、前述の廃貨政策と重なったために、むしろ国内の消費に対して一時的な悪影響を及ぼす結果になってしまった。税制改革は画期的ではあったものの、完璧には程遠い。物品サービス税は、様々なカテゴリーの物品に対して異なる税率が適用されるかなり複雑なもので、しかも石油のような非常に重要な製品については依然として税制の対象外となったままだ。

 

これらの経済改革の結果、インドのGDP成長は2017年は6.5%と、2012年以来の低水準に落ち込んだ。振り返って見れば、廃貨と程遠いの導入の論理的根拠は中期的には健全なものでも、あまりにも性急に実施されてしまったために短期的に不確実性を生んでしまった。流動性の縮小と汚職の問題は引き続きインド経済を蝕んでおり、その結果、国内外の投資家やモディ政権の実績にも悪影響を及ぼしている。モディ氏のインド人民党(BJP)は2018年には逆風を経験した。依然としてBJPはインドの29ある州のうち18を握っているものの、2018年の州議会選挙を通じて徐々に支持を失い、2019年の選挙の情勢にも影響を及ぼしそうである。

 

イデオロギー上の、および経済的な譲歩

 

第17回インド下院選挙でモディ首相が単独過半数を確保できたと想定して、議会は分裂することが予想される。そうなると、モディ首相はイデオロギー上でも経済的にも譲歩を余儀なくされる。これは歓迎される事態ではあるが、下院が分裂することでインドの改革プロセスが遅れることも考えられる。次期政権は金融セクターを刷新し、急増しているインドの労働力を吸収するために雇用を押し上げることに注力しなくてはならないだろう。モディ首相が2014年に包摂的成長を公約に掲げたにもかかわらず、2018年には1100万人分の雇用が失われ、そのうち83%が地方でのものだった。インドの拡大し続ける労働力を支えるためには、8%以上の成長率が必要となる。これを達成しつつ、同時にマクロ経済的安定性を推し進めるのは、政治的な逆風を考えれば非常に困難な課題といえよう。

 

 「2018年の平均工業生産の成長は対前年比で5.1%でした。これは、2017年の3.5%と比べると回復していますが、インドの成長ポテンシャルにははるかに及ばず、中国など他の地域の新興経済各国と比べても低い水準にとどまっています」と、コファスのアジア太平洋地域担当エコノミストの Carlos Casanovaは言う。「インドが適切なレベルの基本インフラを開発できるようにするためにも直接投資は必要です。大規模な供給ボトルネックが今後もインドのインフラ投資の足を引っ張ると思われ、これが中長期的に経済活動に大幅な乗数効果を及ぼす可能性があります。これが、製造部門への流入拡大につながるはずです」と彼は続けた。

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