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2021.10.05
カントリーリスク&経済レポート

中国は、米国の影響が減っている中、ラテンアメリカの主要輸出先としての地位を拡大し続ける

China will continue being a main destination for Latin American exports at the expense of the U.S.

中国とラテンアメリカの貿易関係は過去20年間で大幅に拡大し、徐々に米国とラテンアメリカの関係よりも目立つようになってきている。こうした傾向が続いている背景には、世界の2大経済大国である米国と中国の成長率の差や、近年における両国政府の貿易政策などが挙げられる。
ラテンアメリカでも経済規模の大きい6か国(メキシコを除く、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルー)をひとつのグループとして捉えると、将来的にこれらの国における貿易量の成長率が国内需要の拡大を超えるだろうとコファスは見込んでいる。もちろん、この地域における経済活動の回復は、世界平均や、とりわけ中国や米国の回復には及ばないと見込まれる。そのため、2021年の対中・対米貿易量は明るい見通しとなっている。ラテンアメリカからの輸出においては、米国と比べて中国が主要国の役割を益々続けるだろう。

 

「ラテンアメリカから中国や米国への輸出品目の構成を見ると、全体として多様化が進んでおらず、一次産品に大きく依存しています。この傾向は対中貿易においてより顕著です。多くの国々にメリットがある一次産品の価格上昇は、ラテンアメリカにとって明らかな追い風となっています」と、コファスのエコノミストのパトリシア・クラウス(Patricia Krause)は説明する。

 

いまだ多様化の進まないラテンアメリカからの輸出品の主要市場として、米国に追い付いている中国

2010年、ラテンアメリカ主要6か国からの輸出品について、中国が米国を抜いて最大の輸出先市場となった。2014年に一次産品価格の高騰が収束した後も、中国の存在感が増し続けた一方、同6か国からの輸出において米国が占める割合は、2010年から2019年までほぼ横ばいだった。米国のシェアが伸び悩んでいる背景には、ラテンアメリカとの貿易関係の深化にあまり関心がないことがある。この傾向は、ドナルド・トランプ政権(2017年~2021年)により顕著になった。同政権はメキシコや中国に対する自国の貿易赤字を削減することに注力し、ラテンアメリカ地域との関係強化に消極的だったため、中国が代行として貿易パートナーの役割を果たしてきた。さらに、トランプ政権下における米中貿易戦争の影響で、世界的な農業・食品業界の「輸出ルート」にも変化が生じ、米国の生産者がダメージを受ける一方で、ブラジルなどのラテンアメリカの生産国が恩恵にあずかることとなった。現在、米国はチリ、コロンビア、ペルーと貿易協定を結んでおり、中国はチリ、ペルーと協定を締結している。アルゼンチン、ブラジル、エクアドルは、両大国のどちらとも包括的な協定を結んでいない。

ラテンアメリカの主要6か国においても、GDPのうち輸出が占める割合はそれぞれ異なっている。2020年、GDPのうち輸出が占める割合が最も高かったのはチリ(29%)で、続いてペルー(21%)、エクアドル(20%)、ブラジル(15%)、アルゼンチン(14%)、コロンビア(11%)の順となっている。
また、輸出先の国として米国と中国の順位も国によって異なる。ブラジル、チリ、ペルーでは中国が最大の市場であるのに対し、コロンビアとエクアドルからは米国向けの輸出が最も多い。アルゼンチンについては、ブラジルが最大の輸出先で、欧州連合(EU)、中国、米国の順に続く。さらに、ブラジル、コロンビア、エクアドルでは、EUが第2位の輸出先となっており、ブラジルからの輸出における第3位は米国、コロンビアとエクアドルからの輸出では中国が第3位である。チリについて米国と中国を合わせると輸出の 50%以上を示し、ブラジルとペルーは 40%以上を占めていることも注目に値する。実際のところ、米国および中国向けの輸出高は、ラテンアメリカ地域内の貿易額を超えている。

ラテンアメリカから中国や米国への輸出品目の構成は、全体的に多様化が進んでおらず、一次産品への依存度が高い。この傾向は対中貿易においてより顕著である。金属(40%)、農産物(35%)、エネルギー(18%)の輸出が6か国の対中輸出高の 93%を占めている。対中輸出は、アルゼンチンとエクアドルでは農産物、チリとペルーでは金属、コロンビアではエネルギーに集中している。中国と比べれば依存度が低い(72%)ものの、対米輸出についても同じ3品目の一次産品が主力となっている。
ラテンアメリカも、コロナ禍が世界の国際貿易に与えた影響から逃れることはできなかった。2020年、これら6か国からの輸出総額は前年比で 8%の減少となった。昨年は、対米輸出への影響の方が、対中輸出への影響よりも総合的に大きかった。対米輸出が前年比 19%の減少となった一方で、対中輸出は 4%の増加となった。中国向けの輸出の力強さは、中国経済が米国よりも早期に回復したことによる。さらに、対中輸出では農産物が占める割合が大きいことなど、輸出品目の構成も大きく影響している。生活必需品である食品に対する需要はコロナ禍においても安定だったり、むしろ増加したりしているともいえる。.

 

中国はラテンアメリカからの輸出における主要な役割を維持。輸出品目構成の多様化は見込めず

年、ラテンアメリカ諸国の輸出額は国内市場を超える見通しである。同地域において新型コロナウイルスワクチンの接種が遅れ、新規感染者数や死亡者数が深刻な状況を伴い、他の市場と比べて本格的な経済の回復に妨げが生じている。コファスの見通しでは、2021年のラテンアメリカの平均成長率は 5.2%に留まる見込みであるのに対し、同期間における米国と中国の成長率は、それぞれ 6.5%と 7.5%の成長となる見込みである。
さらに、今年に入って見られている国際的な一次産品価格の上昇も、主要な純輸出国である同地域にとって追い風となる。例えば、2021年1月から9月末において、鉄鉱石、銅、大豆の平均価格はいずれも年間の最高値を更新している。こうした見通しは、世界第2位の鉄鉱石産出国であるブラジルにとって吉兆といえよう。銅については、現在の価格水準(2011年の記録よりも 4%高値)が、世界一の生産国であるチリや、世界第2位のペルーに恩恵をもたらしている。農産物に関しては、主にブラジルやアルゼンチンが記録的な高値のメリットを享受している。
ラテンアメリカの主要輸出先として、中国は米国に勝る地位を維持するだろう。バイデン大統領の就任以降、トランプ政権時代に見られた反自由貿易の過激な論調は穏やかになっているが、バイデン大統領も貿易関係の促進や新たな貿易協定の締結を積極的に推し進める可能性は低いとされている。それよりも米国の新政権は、グアテマラ、エルサルバドルやホンジュラスからの大規模な移民流入への対処や、メキシコおよびカナダとのUSMCA貿易協定の施行に注力する可能性がはるかに高い。しかし、中国が投資や輸出を犠牲し、近年勢いを増している消費志向の成長モデルにシフトしつつあることは最近の動向として見られている。この成長モデルでは、全般的に必要とされる一次産品が重要ではなくなる。
今後のコモディティの見通しとしては、グローバルで環境への影響を重視する流れが勢いづき、銅やリチウムなどの需要が拡大するなかで、一次産品の中でもパフォーマンスのばらつきが継続することが見込まれる。こうした見込みによって、銅市場の見通しは明るく、チリやペルーにとって追い風となっている。とはいえ、両国の政治情勢を鑑みると、現地の鉱業会社にとっての収益が薄れる可能性もある。現在の世界的な高価格と、主にコロナ禍によって生じた強い社会的緊張が、両国におけるロイヤルティーの引き上げについての議論を活発化させる一助となった。

 

 

 

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