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2019.05.15
カントリーリスク&経済レポート

グローバル経済減速のなかで、高級品産業は好調を持続―ただし新たな課題も

In a global economic slowdown, luxury continues to outperform but faces new challenges

偽造品、電子商取引、中国消費者の存在感上昇等で高級品市場は全般的にリセッションの影響を比較的免れてはいるものの、特別なステータスを失いたくなければ、大きく変化しつつある経済に適応しなければならない。

稀少性が前提ではあるが、実際にはどこにでもある。 シャンパンから時計、自動車、宝飾品、オートクチュール、化粧品に至るまで、高級品は雑誌やスクリーン、公共の空間にこれ見よがしに展示されている。こうして高級品が至るところに見られることは、他産業が減速しているなかで、高級品産業の経済的な体質が傲慢にも見えるほど健全であることを反映している。以前からずっと、高級品市場はリセッションに影響されない例外であるように見えていた。だが、状況はそれほど単純ではない。

 

市場の特性は強いが平均化も進む

 

高級品は伝統的に、社会的地位を誇示することを望む「幸福な少数者」を対象とする高額・高品質の製品と位置付けられている。高級品市場は、稀少性・例外性を武器にすることで、グローバル経済活動の減速に対する耐久力を持つとされる人口集団をターゲットとしている。とはいえ、自らの成功を示したいと考える新たな人口集団が登場したことで、この状況も変化しつつある。

 

2018年の高級品市場は、ミドルクラスの成長が見られる中国での消費増大に支えられ、5%の成長を示した(1兆2000億ユーロ規模へ)。現在、世界全体での高級品購入額のうち中国人消費者は33%を占めており、46%まで成長すると予想されている。これは高級品産業にとってビジネス機会だが、同時に、このミドルクラスの経済的な不確実性にますます左右されるようになり、購買力の潜在的な低下に影響されやすくなるため、リスクにもなっている。

 

偽造品と電子商取引、リスクとビジネス機会

 

また高級品市場は、偽造品などの脅威にも直面している。偽造品市場は2020年には1兆8000億ドル規模に達すると推測されており、偽造のターゲットとなったブランドにとっては、金銭的な損害だけでなく、イメージの悪化につながることも多い。社会的な認知を求める願望に基づいているという点では同じだが、偽造高級品の購入は、ブランドの好ましさと購入者の信頼感の双方に影響を与える。たとえば英国でのある研究によれば、偽造品を知らずに購入してしまった消費者の66%は当該ブランドを信頼できなくなり、44%は、偽造への懸念によりブランド品の購入まで止めてしまうという結果が出ている。他方で、一部の偽造品は、オリジナルブランドの評判を高め、そのブランドの真正品を所有したいという願望を生み出している。

 

また電子商取引も、高級品産業に対して非常に特殊な影響を与えている。2018年には[高級品市場において]電子商取引が占める比率は10%に留まったが、2025年には25%に拡大すると予想されている。だが、多くのブランドは電子商取引に抵抗している。一つには偽造品との競合に対する懸念によるものだが(あるブランドがオンラインでの販売を行っていないことが周知されていれば、買い手が騙される可能性は低くなる)、何よりも、店舗での購入体験を通じて顧客とのあいだに育まれるかけがえのない絆を、ロイヤルティと差別化の重要な要素として維持するためである。

 

したがって、グローバル経済の減速が予測されているにもかかわらず(コファスの予測では、グローバル経済の成長率は2018年の2.9%から2019年には3.2%に低下する)展望は良好であるが、高級品市場の健全性はさまざまなグローバル規模の要因に強くリンクしており、経済の他の部分と完全に切り離されているわけではない 。中国の経済活動、電子商取引、偽造品は、高級品市場に打撃を与えるリスクにもなっているが、同時にビジネス機会も生んでいる。高級品ブランドとしては、自らを取り巻く環境の変化を考慮しつつ、独自性を維持するために警戒心を絶やさないことが肝要となる。

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