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2015.03.04
カントリーリスク&経済レポート

中国の債務支払い遅延が高水準に:2014年は全企業の80%が延滞を経験

Corporate overdue payments in China at high levels: 80% of corporates affected in 2014

2015年は成長鈍化と不良債権増加の年に

 

コファスが行った中国における企業信用リスク管理に関する新たな調査[1]によれば、2014年には、10社中8社が支払い遅延を経験していた。グローバル信用保険グループ大手であるコファスは、2015年の中国のGDP成長率は7%に減速すると予想している(2014年は7.4%)。企業は引き続き、高い債務比率、高い資金調達コスト、低い収益率(生産能力過剰を原因とする)といった課題に直面しており、短期的には債務不履行は改善しないものと予想される。

 

 

企業の支払い遅延と不良債権:債務不履行増大のリスクを軽視すべきではない

 

今回の調査における回答企業の79.8%は、2014年に支払い遅延を経験したと報告した。過去3年間高い水準が続いているとはいえ(資料1)、2013年に比べればわずかに改善されている。調査対象の企業のうち半数以上(56.7%)では、過去1年のあいだに支払い遅延の金額が上昇しており、2013年に比べて11.7%アップとなっている(資料2)。延滞期間という点では、2014年の平均延滞期間が90日を超えたと報告する企業が回答企業の19.6%となり、2013年と同じ程度だったとする企業は17.8%に留まった。調査結果からは、全体として、中国における支払状況は2014年も引き続き非常に厳しい状況だったことが分かる。

これは中国銀行規制委員会が発表した不良債権に関する数値とも整合している。不良債権比率は、2014年末の時点で、ここ数年で最高の1.25%となった。債務不履行増大のリスクを軽視すべきではない。

アジア太平洋地域担当エコノミストのRocky Tungは、「不良債権のデータは遅行指標とみられており、中国経済が直面している厳しい状況を示しています。コファスの年次調査で明らかになった企業の支払い行動もこれを裏付けています」と語る。Tungはさらに「2014年末の時点での不良債権額は、要注意債権[2]が58.8%と大幅に増加したことに引っ張られて、前年比42.3%増となっています。こうしたトレンドは、実体経済・金融システム双方を含めて、リスクが上昇しつつあることを示しています」と続ける。

 

 

62%近い企業が2015年の成長減速を予想

 

中国は2014年、前年比7.4%の経済成長を記録したが、これは過去24年間で最も低い成長率である。この下降トレンドはまだ止まりそうにない。コファスでは、2015年の中国のGDP成長率を7%と予想している。2015年1月、コファスは中国のカントリーリスク評価(CRA)[3]を「A3」で維持しつつも、経済の勢いが衰え、債務比率が高く、資金調達コストが高く、国内での支払い動向が不調であることを理由として、「見通しネガティブ」とした。

2014年下半期以来、中国政府は、自国経済が、安定した雇用の成長と穏やかなインフレの組み合わせという正しい方向に進んでいると考えているようである。しかしながら、政府は不動産市場が悪化しつづけないことに関心を注いでいる。「土地利用権移転」が政府にとって大きな財源(2013年は28.2%)となっているからである。中国では順調にいけば1300万人以上の新規雇用が生まれると思われ、インフレは低水準を維持すると予想されている(コファスの予測では2015年のインフレ率は前年比2.2%)。政府が5都市を除く国内全域で不動産購入規制を解除し、金融緩和措置を導入したため(2014年11月の利下げ及び2月の法定準備率引き下げ)、不動産市場は安定に向かう初期兆候を示している。7%というコファスの成長予測は、中国政府の発言とも整合している。これは中国企業にとっても意外な数字ではなかろう。回答企業の61.7%は、2015年もGDP成長の原則が続くと考えているからである(資料4)。

 

 

構造改革のもとで企業が直面する課題

 

その一方で、中国の実体経済においては、三つの主要分野に関して課題が深刻になりつつある。すなわち、1)債務比率の高さ、2)資金調達コストの高さ、3)一部の部門における生産能力過剰を原因とする収益性の低さ、である。成長減速プロセスを穏やかなものにするために金融緩和措置が導入されたものの、新たな低コスト資金が、それを必要とする、またそれを受ける資格のある当事者に提供されなければ、こうした金融緩和措置の主たる目的が実現される可能性は低くなり、与信プレッシャーの増大に対する懸念がさらに高まることが予想されることになろう。

 

前出のRocky Tungは次のように述べている。「実体経済における流動性の配分ミス(特に中小企業に関して)の緩和につながるのであろう非伝統的な措置が行われています。しかし、中国の政策担当者が構造改革・金融改革を進める際には、忍耐が必要になります。たとえば、民間資本による銀行が認められれば中小企業のニーズに応えることになりますが、そういった銀行が設立されるためには、承認からしばらく時間がかかります。中期的に有意義な結果が出るには、さらに時間を与える必要があるでしょう

 

 

 

高リスク部門:化学、建設、製紙・木材、金属

 

2015年、中国企業は引き続き、短期的な困難に直面するものと予想される。コファスでは、支払い振り及び財務実績という観点から、中国経済における主要9部門の評価を行った。

 

sector risk

 

 

 

経済が減速するなかで、産業界の企業は、需要全般の成長鈍化に適応し、新たな成長の原動力を模索する必要に迫られている。中国では債務レベルが高いため、資金調達コストの引き下げが急務となっている。化学、建設、製紙・木材の各部門は、支払い振りと財務実績の双方が悪化を示しており、リスクが上昇している。また、金属部門は引き続き中国における懸念の源となっている。

 

コファスは2003年より中国における企業信用管理調査を実施してきた。2014年の調査は第12回に当たる。今回の調査では、2014年10月から11月にかけて、さまざまな部門の企業882社が参加した。調査によって、中国で活動する企業の支払い振り及び与信管理実践について、よりよい理解が得られる。

[1] 調査は2014年第4四半期にコファスにより実施された。

[2] 要注意債権:融資の返済が91~180日延滞となっており、債務者による完済が不可能なもの。資料3を参照のこと。(訳注:日本における要注意債権の定義とは異なります)

[3] カントリーリスク評価は、任意の国における企業による平均的な債務不履行リスクを評価するもの。その国の経済・政治の展望、コファスによる支払い動向評価、ビジネス環境評価を組み合わせる。この評価は、A1、A2、A3、A4、B、C、Dの7段階で、「見通し」が付される場合がある。

 

 

 

資料1

 

overdues

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資料2

 

trend of overdue amount2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資料3

non-performing loans

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資料4

 

slower growth04

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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