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2016.02.18
カントリーリスク&経済レポート

ラテンアメリカにおいて中国が果たす役割は貿易面だけにとどまらない

ラテンアメリカにおいて中国が果たす役割は貿易面だけにとどまらない

国際市場へのアクセスが限られる諸国にとって重要な国際的資金源となりつつある中国だが、今後10年間でラテンアメリカ各国への投資累積額を2500億米ドルにまで拡大し、年間の貿易取引額5000億米ドルを達成する方針であると発表した。この発表は、2015年に不況を経験したラテンアメリカにとっては歓迎すべきニュースだろう。コファスの見通しでは、2015年のラテンアメリカ地域のGDPは0.6%下落し、2016年にはわずかに好転(-0.2%)すると見られている。

 

中国とラテンアメリカの貿易関係は過去15年間で加速

今や中国はラテンアメリカにとって(米国に次ぐ)第二の輸入元であり、(米国とEUに次ぐ)第三の輸出先でもある。2014年には、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア、チリ、ペルー及びエクアドル(合計でラテンアメリカ地域全体のGDPの88%を占める)の対中国貿易額は、輸出が833億米ドル、輸入が1522億ドルとなっている。ブラジルはラテンアメリカにおける中国の主要貿易相手で、2014年の貿易額は約780億米ドルであった。ブラジルにとって中国は主要な輸出先であり、同国の輸出全体の18%を占めるが、GDP比では中国への輸出は1.7%に留まる。

 

 

 

 

 

貿易額でいえば、チリの中国への依存度はラテンアメリカ地域で最も高い。2014年には、チリの総輸出の24.4%を中国への輸出が占めたが、これはGDPの7.1%に相当する。それに対してメキシコは、中国の需要低下の影響を最も受けにくい国で、中国への輸出はGDPのわずか0.5%にとどまる。対照的に輸入に関しては、メキシコはラテンアメリカ地域の中でも中国製品の主要な出荷先である。

 

ラテンアメリカは中国に対する基礎産品の主要供給国となったが、その一方で中国からの安価な製品が国内に溢れるようにもなった。2009年から2013年までの間に、ラテンアメリカとカリブ諸国(LAC)から中国向けの主要輸出品上位5品目はいずれもコモディティであった。これらは同地域からの総輸出の71%を占めた。その一方、中国からのLACへの主要輸出品上位5品目合計に占める割合は24%である。LACからの輸出は基本的に低付加価値製品で、一部の品目に集中しているが、中国の輸出はより多岐にわたり、高付加価値製品が多い。

 

今後の貿易は魅力低下

コファスの見通しでは、中国のGDP成長は今後数年間は失速を続け、2015年の6.9%から2016年には6.2%となると見られる。これは、00年代の平均年間成長率であった10%という数字を大幅に下回る。ラテンアメリカは、この中国経済の減速の影響を世界でも最も大きく被る地域と思われ、特に貿易額と原材料価格の低下が理由となっている。原材料価格の低下も部分的に中国経済の減速によって影響を受けている。

 

競争力の低下によって中国の市場シェアが縮小する可能性もある。これの背景には、賃金の上昇が生産性の伸びを上回っていること、そして近年の人民元の上昇などがある。中国ではここ10年というもの人件費が上昇しており、国内での生産活動の優位性が薄れつつある。長年、比較的安価な労働力で名を馳せた中国は、それを利用して自国製品の競争力を高めてきたし、ラテンアメリカへの輸出が急速に拡大したのもそういった競争力によるものである。ところが特に、貿易障壁の削減と加盟国間の貿易を促進する目的で締結されるTPPに中国が参加していないことなどから、こういった状況に変化が起きている。

 

機会をうかがう投資家としての中国

ここ何年にもわたって、中国は貿易以外の分野でもその国際的な存在感を高めてきた。特にラテンアメリカとアフリカにおける金融部門でのプレゼンス拡大は目覚ましい。

 

 

 

米州対話フォーラム(Inter-American Dialogue)によれば、2005年から2015年の間に、中国はラテンアメリカ諸国及び同地域の企業に1250億米ドル(同地域のGDPの約2.5%)の融資を行ってきた。しかし中国は、海外直接投資(FDI)においてはラテンアメリカの主要な出資者となるには至っておらず、依然として同地域のFDI総額の約6%を占めているに過ぎない。

 

中国はその融資を通じて、特にラテンアメリカのインフラ改善に貢献した。00年代を通じて、中国は世界で最もラテンアメリカ地域の国内インフラへの投資を行った国であった。これにより、技術系企業や建設会社は技術・物流面での能力を大幅に向上させた。

ラテンアメリカへの投資を強化すると発表した中国ではあるが、その実施能力については不明である。中国はまた、契約条件や環境問題について、過去にラテンアメリカの企業や政府との間に見解の相違があった。

 

 

中国は今後もしばらくはラテンアメリカ地域において、特に投資面で重要な役割を果たすと思われる。しかしラテンアメリカの側にも、相互投資の保証や中国の投資モデルへの理解を深めるなど、取り組むべき課題は多い。

 

 

「全般的に見て、投資、融資及び貿易における中国の重要度は否定できません。しかし、依然として乗り越えなければならない障害も多く、状況を深く分析していく必要があります」と、コファスのラテンアメリカ地域担当エコノミストのパトリシア・クラウス(Patricia Krause)は説明する。

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