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2021.05.26
カントリーリスク&経済レポート

中国: 明るい景気見通しにも関わらず建設およびエネルギーセクターにおける支払いのリスクが上昇

中国: 明るい景気見通しにも関わらず建設およびエネルギーセクターにおける支払いのリスクが上昇

全体的に中国経済は2020年に2.3%成長し、成長を記録した唯一の主要経済となり、コファスではGDP成長率が2021年には7.5%へと加速すると予測している。これは2013年以降最速ペースとなり、政府当局が設定した最低6%を十分に上回るものである。

通常は、経済成長率の上昇は支払遅延件数の減少に結びつくが、経済の回復はセクターによって異なる。このためコファスの2021年中国支払い動向調査[1] では、支払期間が2020年には平均で11日短くなって75日となる一方、支払期間の配分が長期よりも短期に傾いていることが示されている。

最終的に企業は、昨年の大幅な財政面または通貨面での支援措置の恩恵も受けたが、今年はそれ以上の先細りになると予想される。コファスは2021年において、融資提供の成長率が下がる中で2020年にキャッシュフローのリスクが特に高まった社債デフォルトや債務不履行の増加を予測している。

 

コファスのバーナード・オー・アジア太平洋地域エコノミストは、以下のように語っている:

 

「コファスの最新の中国支払い動向調査では、中国企業がコロナ禍により2020年に与信管理を強化するのに必要なステップを講じたことが示されている。支払期間は多くのセクターで短縮され、さらなる与信管理ツールが展開されたが、この中には信用保険および信用調査レポートの利用に加え、債権回収やファクタリングが含まれる。この結果2020年には、前年と比べて支払い遅延を経験した企業が減った。」

 

「パンデミックの道のりが不確実で、持続的な経済回復が確証が得られたとはまだまだ言えないものの、中国企業は中国の経済見通しに関して楽観的であり、回答者の73%が今年の経済成長の改善を予測しており、2020年の44%より大幅増を記録している。これは、売上成績やキャッシュフローの改善を今年期待している企業が増えていることと、歩調を合わせている。」 

 

「しかしながら調査では、特定のセクターにおいて信用リスクが高まっており、今後数か月にわたる緊密なモニタリングが必要とされる。年間総売上高の 10%を超える売掛債権の超長期の支払い遅延(ULPD180日以上の超長期支払い遅延)を報告した建設およびエネルギーセクターにおける企業の割合は2020年に倍増し60%を超え、キャッシュフローリスクの上昇を示唆している。この発展は、特に建設および不動産セクターでの、中国本土における社債デフォルトの上昇と重なっている。」

 

「今後の展望に関してコファスは、特にパンデミックにより2020年にキャッシュフローのリスクが高まっていたセクターの中で、2021年に中国において社債デフォルトや債務不履行が増加することを予想している」

 

支払い遅延[2]: 大半のセクターで支払い遅延の期間が短期化するものの、建設業は例外

 

2020年には支払い遅延を経験した企業は減り、回答者の57%が支払い遅延を報告したが、これは2019年の66%より減少した。支払い遅延の減少は、企業活動におけるパンデミックの影響を和らげ、減税、融資保証や融資の金利免除を含む強力な政策を反映している。コファスの調査によると、13セクターのうち11セクターの企業が、困難な状況にもかかわらず支払い遅延の減少を回答した。この中でも木材加工業、製薬業、運輸業およびICTが最大の低下を記録した。卸売業では変化はない一方、建設業では支払い遅延の件数が増加した。

「取引先の資金難」が、支払い遅延の主な理由であった。この資金難の原因は「競争の激化」の次に「資金源の不足」が最も一般的な理由であり経済セクターによっては政府の支援にアクセスできない可能性があることを示唆している。

 

景気の上向きにより楽観主義が強くなるものの、価格上昇が依然として主な懸念

 

中国が2020年においてGDP成長を記録した唯一の主要経済であり、最近の経済データが2021年第1四半期においても明るい景気を示唆していることから、企業は全体的に経済状況に対して楽観的であることが、調査で示されている。回答者の70%あまりが2021年において成長の改善を予想しており、これは2020年の44%より大幅に増大している。この楽観主義は、今後12か月に売上とキャッシュフローの増加を予想する企業の割合が大きいことを伴っている。この結果、大半(62%)の回答企業が1年以内にCOVID-19以前の水準に自社の業績が戻ることを期待する一方で、4分の1近くは回復までに1年から2年かかると予測している。回答企業が最も報告した経済的なインパクトが価格上昇であり、3分の2近くが、政府の公的措置によりグローバルサプライチェーンが混乱したことから、パンデミックにより商品価格の上昇につながったと答えている。

パンデミックにも関わらず、回答企業の47%が2020年にキャッシュフローのリスクの緩和のためにいかなる与信管理ツールをも使っていないと答えたが、2019年にはこの数字は40%であった。同時に、複数の与信管理ツールを展開している企業の割合が増大している。信用保険を利用している企業の割合は、2019年の17%から2020年の27%に増大する一方、信用調査レポートを活用している企業の割合は19%から、2020年の31%へと大幅に上昇した。売掛債権回収とファクタリングの両方が昨年よりも増大し、それぞれ10%と13%になった。

 

社債のデフォルトと債務不履行が2021年に増大する見込み

 

一見するとコファスの調査の結果では、キャッシュフローのリスクと社債のデフォルトの間の関連を示しているようには見えないが、セクター別内訳を見ると関連性の強化が示されている。中国における社債のデフォルトは2014年の最初のケースから増加しており、ブルームバーグ社が発表したデータによると、2015年の10億米ドル未満から2020年には270億米ドルを記録している。2021年の最初の4か月間で、社債のデフォルトは70%増加し180億米ドルに達しており、その大半が不動産、航空業および電子産業である。デフォルトのかなりの割合(37%)が、航空や不動産、金融サービスや観光などを含む各種セクターに関わっていた中国の企業グループである海航集団と関連していた。コファスの調査が示唆するところでは、これらセクターの多くにおいてキャッシュフローのリスクも高く、建設業における回答企業の67%が、年間売上の10%を超える額が長期支払い遅延と関連する債権が含まれると報告しており、ICTでは29%、運輸業では19%であった。

今後の展望に関してコファスは、2020年にキャッシュフローのリスクが高まっていたセクターの中で2021年に社債デフォルトや債務不履行が増えると予測しており、この旨を2021年中国支払い動向調査において示している。これらセクターは年間総売上高の10 %を超える売掛債権の超長期の支払い遅延の最大割合を記録するセクターであり、建設業(67%)、エネルギーセクター(62%)および小売セクター(30%)が含まれる。

 

[1] 本2021年中国企業決済調査は、本年2月から4月にかけて行われ、中国本土に位置する主な13部門を通じて600社以上に対して調査を行った。
[2] 決済遅延 – 決済期限日と実際に決済が行われた日付との期間。

 

2021年中国支払い動向調査に関するフルレポートは下記のリンクからダウンロードしていただけます。

 

 

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全体的に中国経済は2020年に2.3%成長し、成長を記録した唯一の主要経済となり、コファスではGDP成長率が2021年には7.5%へと加速すると予測している。これは2013年以降最速ペースとなり、政府当局が設定した最低6%を十分に上回るものである。

通常は、経済成長率の上昇は支払遅延件数の減少に結びつくが、経済の回復はセクターによって異なる。このためコファスの2021年中国支払い動向調査 [1]では、支払期間が2020年には平均で11日短くなって75日となる一方、支払期間の配分が長期よりも短期に傾いていることが示されている。

最終的に企業は、昨年の大幅な財政面または通貨面での支援措置の恩恵も受けたが、今年はそれ以上の先細りになると予想される。コファスは2021年において、融資提供の成長率が下がる中で2020年にキャッシュフローのリスクが特に高まった社債デフォルトや債務不履行の増加を予測している。

[1] 本2021年中国企業決済調査は、本年2月から4月にかけて行われ、中国本土に位置する主な13部門を通じて600社以上に対して調査を行った。

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