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2014.09.18
カントリーリスク&経済レポート

アメと鞭:中国経済を待ち受ける課題

China in 2014 : stable growth with risks of financing and overcapacities

今年初めから、中国政府はさまざまな改革課題を実施する努力を続けている。なかでも大きいのが中国経済の構造調整だ。国内需要があいかわらず抑制されているなかで、不動産市場は低迷を続けており、いくつかの部門における生産能力過剰は未解決のままであるだけに、中国が7.5%という経済成長目標を達成できる可能性は低い。コファスでは、より多くの政策支援が予定されていることを踏まえて、2014年の中国のGDP成長率は7.4%になると予測している。

 

不良債権の増大と資金調達コストの上昇 

 

信用の質という点では、今年初めに発表されたコファスによる中国企業の支払動向調査の結果とも整合しているが、中国では不良債権(NPL)が増大しており、金額ベースで見た2014年上半期のNPLは前年同期比で28.7%増となっている(資料1)。2014年上半期に見られたマクロ経済の動向は、中国経済に関するコファスの予測に沿ったものである。コファスは、経済成長が安定的になる一方で、各産業の当事者(特に小企業)は、資金調達コストの点から需要成長の減速に至るまで、高まる圧力に直面すると見ている。

 

アジア太平洋地域担当エコノミストであるRocky Tungは、次のように語る。「NPLの増大は融資の質に関する懸念につながり、他方、資金調達コストの問題は、さまざまな部門にとって、また信用ファシリティを利用できない小企業にとって引き続き悩みの種になっている。したがって、インフレ率を厳しくコントロールしつつ、広範な利下げを行うことが企業にとって資金調達面でのプレッシャーを緩和することにつながり、成長率を政府目標の7.5%に近づけていくことになる」

 

不動産市場の低迷と生産能力過剰

 

2014年上半期の中国経済で最悪だったのは不動産部門である。上半期は強い逆風に見舞われ、下半期にも劇的な回復は期待できない。Rocky Tungは「価格圧力と不動産デベロッパーの債務レベルがますます懸念要因になっており、未消化在庫の水準が高いことから、この部門の短期的な見通しは引き続き暗い」と話している。

 

とはいえ、中国経済にとっての不動産部門の重要性は大きく、この部門の崩壊は回避しなければならない。中期的な需要を主導するのは今後も政府による都市化計画であり、投資の量よりも質にフォーカスしていくことになろう。

 

金属産業はあいかわらず生産過剰問題に頭を抱えており、需要成長も通常より減速しているため収益性がさらに損なわれている。エネルギー部門については代表として石炭部門を見ているが、経済全体の勢いが衰えているなかで、やはり需要成長の鈍化に苦しんでいる。価格トレンドがさらに悪化すれば、それによって収益性が損なわれ財務面が苦しくなることで、今後のリスク水準の上昇につながるはずだ。木材・製紙部門では、今年前半には楽観論も見られたが、最終需要で成長が鈍化しているために価格トレンドが弱まっている。政府が産業の統合と生産量の削減を進める決意を見せているため、2015年以降の需給ダイナミクスは改善される可能性がある。

China_panorama_riskbarometer_jp

 

 

消費財市場では鈍い成長 

 

中国の消費財部門においても同様に、中期的な展望は引き続き明るいものの、短期的な課題は無視できない。中産階級の勃興、生産年齢人口の増加、生活水準の向上、小売チャネルの改善と行った流れに乗って、中国の消費財市場は、中期的な経済成長の要因としてペースアップを続けるだろう。とはいえ、政治腐敗防止の制度と合わせて、所得成長率の鈍化により、短期的には市場のポテンシャルが頭打ちになると思われる。これは中国の経済成長が鈍化するというコファスの見解とも整合している。

 

さまざまな側面で改革が進行しているが、とはいえ成長がなおざりにされているわけでは決してない。今年は成長の勢いの鈍化を示す兆候が多数現れており、政府が経済成長を維持するためにより強力な刺激策を導入する可能性が高いと考えられている。具体的には、ターゲットを絞った刺激策が予想される。さらに、想定される利下げは、直接的に資金調達コストを引き下げ、消費を刺激するだろう。とはいえ、中国人民銀行としては、そうした金融緩和がもたらす潜在的な信用リスクとのバランスを取らないわけにはいかないだろう。

 

 

資料1

 

2014年上半期、NPLが急増を続ける

China_panorama_appendix_jp
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