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2020.06.18
カントリーリスク&経済レポート

欧州の企業倒産:特例措置により倒産申立期限を一時的に停止

欧州の企業倒産:特例措置により倒産申立期限を一時的に停止

COVID-19パンデミックが欧州で前例のない甚大な経済的影響を及ぼしている。移動制限で労働者が通勤できず、また、消費も落ち込んでいる。この需要・供給の二重ショックにより、多数の企業が少なくとも部分的に生産を停止している状況である。企業は、収益減少に伴う資金繰り悪化により支払いが遅延し、最終的には支払不能に陥っている。

 

 

 

欧州諸国では危機対応のため倒産法手続の特例措置を導入

欧州では、多くの国で、会社が支払不能に陥ると経営者が期限内に管轄機関に届出をしなければならず、これを怠った経営者は個人責任を負う。管轄機関はこれを受けて倒産手続を開始する。大部分の国では、パンデミック抑圧後の国内経済の構造と回復力維持を狙いとして、政府が企業の資金繰り支援措置(社会保険料・税金の繰延べや減免、政府による銀行ローン保証等)と、倒産法手続の特例措置という二重の主要政策を導入している。

 

ドイツでは、会社が支払不能又は債務超過に陥ってから3週間以内に経営者が倒産手続を申し立てる義務を負うが、政府はこの義務を2020年9月30日まで停止するとしている。この措置は連邦司法省令によって2021年3月31日まで延長できる。スペインは倒産申立義務を12月31日まで猶予することとした(本来は支払不能状態となってから2ヶ月以内)。イタリアでは、6月30日までは、倒産申立は検察庁が行う場合に限ることとした。

 

フランスでは、支払不能に陥ってから45日以内に経営者が倒産手続を申し立てなければならず、これをしない場合は申立遅延の責任を負うが、8月24日まではこの義務が停止される。この日までは、3月12日時点での会社の状態を基準に、支払不能の判定を行う。英国で5月20日に発表された倒産特別措置法案では、債権者申立の倒産手続が原則として停止される。法の施行が6月であれば、この措置は7月までとなる。

 

オランダは欧州の中で唯一の例外であり、COVID-19パンデミックが始まった後も倒産の特例措置を全く導入していない。

 

しかし、経済的影響の深刻さと、特例措置はあくまでも一時的なものであることからすれば、特例措置を導入しても、措置の終了後に倒産件数の大幅な増加を防ぐことはできないと思われる。

 

特例措置の導入にもかかわらず、倒産件数とGDP成長率は不整合

コファスの予測モデルによれば、欧州全域で2020年下半期と2021年の倒産件数の急増が見込まれる。COVID-19危機の被害が最も少ないドイツでも、2019年末と2021年末の間に倒産件数の12%増加が予測される。フランスとスペインの方が被害は深刻とみられ、それぞれ21%と22%増が予測される。倒産件数の増加率予測が最も大きいのはオランダ(+36%)、英国(+37%)、イタリア(+37%)である。

 

倒産予測は、経済成長率予測と概ね整合しているが、明らかな不整合がいくつかみられる。2021年のGDP成長率(2019年比)の減速は、オランダとドイツが2%未満で最も被害が少なく、フランスとスペインがこれより深刻でそれぞれ3%未満と4%未満、さらに、英国5%、イタリア6%(前年比)と見込まれる。

 

これらの不整合は、一部は倒産特例措置の不足により説明することができる(例えばオランダ)。景気後退時の倒産の件数は、手続コストにも関連している(英国とオランダではコストが安い)。

 

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