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2014.04.15
カントリーリスク&経済レポート

アジアのエレクトロニクス産業に新たなパラダイム:明確な活性化の一方でリスクは増大

イノベーション:成長を牽引しつつ、リスクを生じさせる

グローバルな製造ネットワークからグローバルなイノベーションネットワーク(地理的な境界を越えた製品開発・研究活動を伴う)へと移行したアジアのエレクトロニクス産業は、2017年まで年間3%以上の成長を見せるはずである。アジアがエレクトロニクス分野における新たなイノベーションの中心となるなかで、現地企業は現在、製造と研究の国内化に期待をかけている。

 

だが、エレクトロニクス部門の活性化は新たなリスクももたらしており、コファスがアジア地域で確認した請求書未払い事例が徐々に増加していることからも裏付けられている。2013年には、アジア太平洋地域のエレクトロニクス・IT企業の4社に3社の割合で、支払いの延滞を経験している。その中心は、エレクトロニクス部品及び消費者向けエレクトロニクス製品の流通である。

 

アジアのエレクトロニクス部門を脅かしているリスクは主に以下の三つである。

 

  • リスク1この部門における中規模の企業と非常に大規模な企業のあいだでの、研究開発投資余力のギャップ拡大。
    ますます複雑な製品を提供する半導体メーカー、新たなオファーを創出する巨大企業(Androidを提供するGoogleなど)といった市場の双方においてイノベーションが生じている。こうした非常に規模の大きい企業は市場シェアを継続的に伸ばしており、その優位は、より小さな規模の企業にとっては収益性・収益率の低下をもたらしている。イノベーションの中心に位置する半導体メーカーとしては急速な変化に直面して研究開発への投資を増やさざるを得ないため、こうした状況から悪影響を受ける。

 

  • リスク2:中国本土におけるエレクトロニクス産業のリスク増大
    中国本土は世界のエレクトロニクス製品の3分の1以上を生産している。だが中国のエレクトロニクス企業は上述のようなコスト・利益率への圧力による影響を特に強く受けており、支払状況に関するコファスの調査でも確認されている。中国のエレクトロニクス部門では、延滞日数の増大が見られる。2013年には、支払延滞の44%が60日以上の延滞となっていた(2012年は25%)。さらにエレクトロニクス部門では、150日以上の支払延滞が、全部門の平均の2倍に達している。こうした状況の悪化は主として、事業キャッシュフロー上の問題と、中国における景気減速によるものである。製品組立に従事している企業はリスク増大に直面している。

 

  • リスク3:中国本土との競争が香港・台湾を中心とするアジア企業に影響を与えている
    香港経済・台湾経済は中国に依存しており、中国本土における主要販路の減速による影響を受けやすい。香港に関しては、今日では香港の産業界全体で中国へのアウトソーシングが行われているため、こうした依存度が特に高いが、エレクトロニクス&IT産業ではこれが特に顕著である。台湾に関してはエレクトロニクス企業の規模が香港に比べて大きく、生産チェーンでもより上流側に位置している。製品納入先の活動水準に大きく依存していることから、台湾企業自身も国内需要(中国)及び輸出(欧米の他、アジア向けも増大している)の成長ペースに大きく影響されている。

 

リスク増大にもかかわらず、成長要因はある

アジアのエレクトロニクス産業がこの難局を切り抜けるためには、自ら生まれ変わらなければならない。強みはたくさんある。製品の陳腐化のいっそうの加速に対応するべくイノベーションを重視すること、中規模企業が変化する消費者需要に適応し、大規模グループと既存のギャップを縮める能力……これらが他よりも優位に立つ材料になる。

 

中期的にこの部門の成長を牽引する要因としては、特に、オンボード・エレクトロニクス(自動車・航空機に搭載されるもの)、医療部門向けのエレクトロニクス機器、先進国の高齢者による需要への対応が挙げられる。また中国政府は、長期投資並びに中国企業・外国企業間の協力を促進するための措置を準備している。

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