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2018.04.10
カントリーリスク&経済レポート

新たな地中海貿易ルートは、地中海地域の南部・東部を通過

New Mediterranean trade routes will be through the South and East of the region

地中海地域では、最近の保護主義の台頭により、自由貿易協定による広大なネットワークに変化が生じつつあり、地中海域内の貿易ルートの再編が始まっている。新たに生じている2つのトレンド:

  • 地中海南部・地中海東部の諸国は高付加価値市場向けにシフトしており、特に自動車・ICT製品の輸出にそれが顕著に見られる。
  • ギリシャ、キプロス、エジプトなど新たな原材料(エネルギー、化学、建設)供給国がこの地域に登場している。

 

 

域内貿易は減速

 

アジアでは域内貿易の重要性が高まっているが、地中海地域の諸国は、なかなかこれを実現できないでいる。1995年の「バルセロナ・プロセス」以来、数多く生まれた多国間・二国間協定も功を奏していない。地中海地域における域内貿易は、輸出に占める比率が2001年の31%から2016年には29%となるなど、減少傾向さえ見られる。規模の点から、域内貿易のかなりの部分(輸出入フローの79.4%)は、ユーロ圏に含まれる地中海諸国で構成される欧州地中海地域[1]に集中している。しかし、欧州地中海地域の比重は過去15年で低下してきており、地中海南部地域[2](10.1%)、地中海東部地域[3](8.4%)の諸国、さらにはバルカン諸国[4](2%)が浮上している。  

 

過去20年間に域内協力の取組みが強化されたにもかかわらず、このように貿易統合の水準が低いことについては、多くの説明がなされている。この欠陥を説明する際に、最初に提示されることが多い論拠は、農業・繊維セクターに特化した南部諸国・東部諸国のあいだの競争である。だが、それ以外にも理由はある。2009年の世界金融危機と2011年の「アラブの春」は、この地域の諸国の開放性という点で悪影響を与え、地中海南部諸国、地中海東部諸国の経済をさらに減速させた(モロッコを除く)。これに加えて、自由貿易協定の導入が相次いだことにより、さまざまな協定のあいだで条件が異なり、貿易プロセスが複雑化した。これと平行して、貿易拡大への希望が表明されているにもかかわらず、保護主義的な措置(関税、反ダンピング措置、公的補助金、数量割り当てなど)の数は着実に増えていった。2012年以来、地中海地域全域において、正味で381件の保護主義的な措置が導入された。その半分近くは、域内他国を直接対象とするものだった。

 

地中海南部・地中海東部諸国で自動車・ICT製品の輸出が増加、原材料の供給も始まる

 

2000年代以降、地中海周辺諸国の輸出構造には新たなトレンドが現れている。欧州地中海地域は自動車・ICT(情報通信技術)など高付加価値セクターにおける存在感を低下させており、代わりに農産加工品及び化学製品の輸出が増加している。地中海南部・地中海東部諸国では、繊維など伝統的なセクターが縮小する一方で、高付加価値市場向けへの移行が始まっている。こうした動きはバルカン諸国ではあまり顕著ではないが、農産食品・金属の輸出は明らかに増大している。さらに、北アフリカ諸国と地中海東部諸国のあいだの貿易が強化されており、新たな貿易ルートが登場しはじめている。

 

•      自動車:モロッコ及びトルコ→欧州地中海地域・地中海東部地域

 

モロッコ及びトルコが、工業セクターの育成・強化によりグローバルなバリューチェーンに参加する政策を採用したことが、地中海地域内における自動車輸出の再編をもたらした。2016年、トルコは域内の自動車輸出の13%を占め(2000年にはわずか2%だった)、欧州地中海地域諸国への輸出が増大している。2012年から2016年にかけて、モロッコから地中海地域諸国向けの自動車輸出は、同国の輸出増額の13%を占めた。こうした輸出は依然として欧州市場向けが中心だが、貿易相手国にはトルコ、エジプトも含まれている。

 

•      ICT:チュニジア及びモロッコ→欧州地中海地域

 

チュニジア・モロッコ両国は、ICT輸出の拡大を進めている。チュニジアにおいては、ICTへの新たな特化は、欧州地中海地域(特にフランスだが、スペインも)に対する輸出増加という形で現れており、現在では、欧州地中海地域に対する輸出総額の30%を占めるに至っている。モロッコにおいては、主要輸出先に変化があり、フランス、ポルトガル、マルタが減少する一方で、スペイン及びイタリア向けの輸出フローが増加している。

 

•      エネルギー:ギリシャ及びマルタ→地中海東部地域

 

地中海地域において最も貿易額が大きいのは依然としてエネルギーだが、セクターの構造は変化しつつある。天然ガス及び石油の輸出は重要性を低下させており、精製済み製品の重要性が増している。ギリシャ及びマルタにおいては、トルコ及びエジプトといった地中海東部地域への輸出が増大している。

 

•      化学:エジプト及びキプロス→地中海東部地域・欧州地中海地域

 

エジプトの伝統産業の一つは、化学及びプラスチック製品セクターである。両セクターは輸出志向であり、トルコとレバノンを主要顧客としているが、欧州地中海地域、特にフランスへの輸出フローも伸びている。またキプロスもイスラエル、ギリシャ、レバノンといった地中海東部地域諸国をターゲットとしている。

 

[1] 欧州地中海地域:ポルトガル、スペイン、フランス、イタリア、スロベニア、ギリシャ、キプロス、マルタ

[2]地中海南部地域:モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプト

[3]地中海東部地域:イスラエル、トルコ、レバノン

[4] バルカン諸国:アルバニア、ボスニアヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ

 

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