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2016.05.26
カントリーリスク&経済レポート

フランス経済の浮上は決定的か?

Is the French economy definitely taking off?
  • 第1四半期の指標(成長率、消費支出、投資)が楽観論を生む
  • 唯一の懸念は輸出の減少:新興市場経済の減速と競争力不足が原因
  • 企業倒産比率は急速に改善(2016年は3.2%減少と予想)― 例外は繊維・衣料セクター及びイル・ド・フランス地域
  • セクターの50%で改善が見られる
  • 道路輸送は大きな競争力ギャップに妨害

 

国内需要が経済活動を支える一方、輸出が陰を落とす

 

2016年1月~4月は、フランス経済に関して多くの明るい指標が見られた。2014年に始まった安定的な成長(2015年第4四半期に対し、2016年第1四半期は0.6%成長)は、国内需要に牽引されて勢いを増している。家計消費支出(1.2%増)は2004年以来最高の水準に達し、投資も予想を上回った。今年は2012年以来初めて企業投資が経済成長に貢献する見込みである。政府による減税措置及び石油価格の低下が追い風となった。コファスでは、フランスの経済成長率を2016年は1.6%、2017年は1.3%と予想している。

 

引き続き、経済活動の足枷となっているのは、対外貿易だけである。第1四半期には輸入は伸びたが(0.5%増)、輸出は減少した(0.2%減)。これは、特にBRICS諸国の一部においてリセッションが予想されるなど、新興市場諸国における経済活動の減速が一因となっている。しかし、グローバル輸出市場におけるフランスの後退(2011年以来3.5%)には、この新興市場諸国の減速という問題だけでなく、構造的な弱点も影響している。企業全体ではフランスとドイツはほぼ同数だが、そのうち輸出企業の数を見ると、フランスはドイツの3分の1しかない。さらに、輸出事業を開始したフランス企業のうち、1年後に輸出を続けているのはわずか3割、3年後にはわずか1割になってしまう。

 

価格競争力という点では、フランスは、大幅に低い単位原価の恩恵を受けているスペインやイタリアに後れを取っている。価格以外の競争力という点では、フランスは輸出向けハイエンド製品(航空・防衛産業、贅沢品、ワイン)の比率が41%で、ドイツの48%に負けている。中期的には、企業投資によって輸出品の品質は改善されるだろうが、ギャップを埋めるには数年を要するだろう。

 

企業倒産及びセクターリスクは正常な水準に回復

 

景気の回復は、明らかに企業倒産件数の減少及びセクターリスクの急速な改善に反映されている。

 

企業倒産比率は、正常な水準に戻りつつある。コファスの予測モデルによれば、2016年に企業倒産件数は3.2%減る見込みである。2016年4月末の時点で、前年同月からの企業倒産件数は58846件(4.3%減)、負債額33億5000万ユーロ(8.6%増)であり、影響を受ける雇用数は2.4%減となった。さらに心強いことに、企業規模の大小を問わず改善傾向が見られており、特に大企業において顕著であることだ(21.5%減)。倒産企業の平均売上高も、危機以前の水準(59万1800ユーロ)に低下している。企業倒産の件数が増加したのは中央フランス(2.9%増)及びイル・ド・フランス(3.0%増)の2地域のみである。イル・ド・フランス地域が倒産件数最大(全国合計の21%を占める)となった理由として、2015年11月のテロ攻撃は理由の一部でしかない。というのも、倒産件数増加の傾向はテロ攻撃の発生日以前から始まっており、観光、ホテル、外食以外のセクターにも及んでいるからである。‑

 

セクターリスクという点では、十分に明るい傾向が見られ、コファスのエコノミストが調査対象としている12のセクターのうち6セクターにその恩恵が現れている。

 

  • フランスの各セクターのうち、最初に「低いリスク」カテゴリーに分類されることになったのは、堅調な家計消費支出に支えられた小売セクターだった。
  • 「中程度のリスク」に格上げされたのは、自動車、製薬(4月に欧州レベルでも格上げされている)、化学、輸送の各セクターである。
  • 建設セクターは回復しつつあり、「非常に高いリスク」を脱し、「高いリスク」に格上げされた。

 

ただし、格下げとなったセクターも一つある。繊維・衣料セクターは「高いリスク」に分類されることになった。このセクターの企業倒産のうち85%は衣料品関連であり(4月末時点で6%増)、これがセクターリスク格下げの主因となっている。背景には、競争の激化とオンライン販売の非常に力強い成長がある。

 

読みにくい道路貨物輸送

 

輸送セクターのリスクは改善されたが(「中程度のリスク」に格上げ)、道路貨物輸送の中期的な展望は不確実性を増している。このところ、道路貨物輸送はコモディティ価格の低下と、建設セクターの安定及び健全な海上輸送産業に牽引された需要の安定による恩恵を受けている。このセクターには大企業は少ないものの、その少ない大企業が業界の約80%のシェアを占めており、地位強化のチャンスをつかんで、小規模な競合他社への圧迫を強めている。そこで小規模な企業は、エネルギーコスト低下による利益を運賃引き下げに回さざるをえなくなっている。

 

このセクターは主として小規模で脆弱な企業で構成されているため、企業倒産率はもっぱら今後の給与法制(マクロン法)の影響と、予測困難な石油価格トレンドに依存している。現在、このセクターの倒産件数は減少しているが、今年初めに多くの企業が設立されたため、2019年に企業倒産のピークが生じる可能性がある。

 

 

出版物をダウンロード

  • Part 1: Macroeconomic situation
  • Part 2: Company insolvencies
  • Part 3: Sectoral Risk
  • Part 4: "Road Transport" Focus

 

 

 

 

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