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2019.04.24
カントリーリスク&経済レポート

中央アジア、中国、及びロシア:理に適った三カ国提携

Central Asia, China, and Russia: a three-way partnership of reason

ニュー・シルクロード(一帯一路)の2本の分岐に位置する中央アジアは、中国とヨーロッパにとって貿易相手でもありそれぞれの地域への入口でもある。移民、軍事基地、文化などを通じての同地域における長年にわたるロシアの影響力も注目に値する。現時点で、中国とロシアはそれぞれ欧米の考え方への抵抗やイスラム過激派の拡大に対する闘いなどに関して、親交関係を確立する理由をいくつか有している。しかし、中国が同地域の回廊開発の資金の最大の提供者である以上、近いうちにパワーバランスが変化する可能性もある。

 

2019年初頭、中国の一帯一路計画には130カ国が関与し、世界のGDPの41%、貿易の49%を占めるに至っている。中央アジアではこれは、炭化水素の研究、開発、及び輸送、鉱業、水力発電を含む発電及び送電、道路及び鉄道の建設と近代化、物流センター、電気通信、農業、観光などの分野における直接投資及び融資の形となって表れている。しかし、ほとんどの投資は一帯一路のブランドの恩恵を受けた既存のプロジェクトに向けられた。これまで同地域において建設されたインフラは、比較的限られている。中央アジアに含まれるのはわずか5カ国(アフガニスタン及びモンゴルを除く)でしかなく、一帯一路の計画のうちそこを通る陸上の回路は6本中2本に限られ、さらに海上のルートは1本も通っていない。さらに、プロジェクトの選定においてガバナンスの質が決定的な意味を持っているため、劣っていると考えられるこれらの国の事業環境がリスクとなっている。さらに、中国は公的債権者から成るパリクラブのメンバーではないため、透明性の欠如も問題とされる。中央アジアにおける中国の影響力は増しているが、それに伴い、中国人労働者、中国企業、そして中国からの輸入品に対する優遇措置などによる反中感情も高まっている。さらに、融資と比べて直接投資と助成金は極めて少額にとどまっているため、プロジェクトの進行は同地域の各国の対外債務拡大にも繋がる。

 

中国が中央アジア各国において存在感を示し始めたのは1990年代である。それに対し、ロシアの文化的・軍事的な影響力はそれよりはるかに古い歴史を持つ。ロシアはカザフスタン、キルギスタン、タジキスタンに軍事基地を有し、特にイスラム系テロリストとの闘いに力を入れるとともに、中央アジアから約400万人の移民を受け入れており、これが多額の海外送金(2018年にはタジキスタンではGDPの36%、キルギスタンでは37%、ウズベキスタンでは13%)の理由となっている。

 

ロシアの影響力は依然として大きいが、経済面では中国が補完する部分が増えてきている。中国経済はロシアの8倍の規模を誇る。そのためロシアが、中国によるキルギスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン(及びイランとトルコ)をヨーロッパのゲージで横断する鉄道プロジェクトや、ロシアを通過する2つの選択肢を提供するカスピ海ルートの開発に不快感を示す可能性もある。欧米諸国及び湾岸諸国による同地域への関心の高まりは中国も歓迎しており、これが新たな弊害をもたらす可能性もある。

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