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2014.06.12
カントリーリスク&経済レポート

イギリス、景気回復の力強さを反映し、A2に格上げ

イギリス経済は2009年のリセッションに際して、家計消費・投資が急減速したことにより他の欧州諸国に比べより厳しい影響を被ったものの、今日、成長回復の力強さには突出したものがある(2013年は1.8%)。コファスの予測では2014年の成長率は2.7%であり、その勢いはドイツ(2%)を凌駕し米国に肩を並べる可能性がある。

サービス中心の経済から多角化された経済への変化は緩やかだが、産業再編は進んでいる。いくつかの弱点は引き続き残っているものの、コファスはイギリスのカントリーリスク評価をA2とした。

 

 

驚くべき力強さを見せるイギリス経済の成長~重視される投資

 

イギリスがこうして危機からいち早く見事に脱出できたのは、増大する債務、輸出の減少、膨れあがった金融部門に対処するために取られた措置の成果である。2012年下半期以来、ECB(欧州中央銀行)がきわめて積極的な金融政策を実施し、イングランド銀行が3750億ポンドの資金注入を行ったことで、家計・企業の信頼感を回復することができた。

 

2013年には、失業率の低下、建設部門に対する支援策、対中小企業を中心とした信用条件の緩和が消費の回復を後押しした。2014年には消費に代わって投資が主役を演じることになろう。投資部門の良好なパフォーマンスによって、予想される金融政策の引き締めを受けて2015年にやや成長が減速したとしても(予想成長率は2.1%)、潜在的成長率の上昇が可能となるはずである。

 

いくつか残る弱点とは

 

こうした順調な概況にもかかわらず、依然としていくつかの弱点が残っている。

 

イギリス経済の主な脆弱性は、あいかわらず、家計債務である(可処分所得の129.9%という数値は、米国に次いでG7諸国で最も高いレベルである)。

 

また生産性も相対的には弱い。イギリスは依然として危機以前の生産量を回復していない。コファスの試算によれば、危機以前の生産量を回復するのはようやく2014年第3四半期、つまり危機発生から26四半期後になると思われる。これよりも回復が遅れているのは、他にイタリアのみである。こうした脆弱性は、特にイギリス企業の慢性的な過少投資の結果である。

 

現在の経常赤字は、不十分な投資を含め、こうした国内的なアンバランスを反映したものである。製品輸出は、イギリスの貿易には新興市場諸国をめざす動きが弱く、また単位労働コストが上昇していることもあって、1990年以来減少している。製品供給の不振は金融サービス輸出により辛うじて相殺されている。こうした傾向はイギリス企業の競争力低下を裏付けるものであり、エレクトロニクス製品など価格弾力性の高い部門において特にそれが顕著である。

 

 

 
傑出した三つの部門が牽引する産業再編

 

専門性という点での見劣りは否めないものの、コファスでは、活力あふれる技術革新と国家による支援を追い風として、高付加価値部門における顕著な産業再編が見られる分野に注目している。すなわち、製薬、航空宇宙、自動車である。

 

  • 製薬部門 生産性が高く、世界で最も利用されている薬剤の15%を生産している。研究開発投資が最も大きく、支出全体の10%を占める。年間の貿易黒字が60億ポンドを超え、対外貿易において最も貢献している部門である。

 

  • 民間・軍用航空宇宙産業 世界で有数の部門として、輸出全体の5分の1がこの部門に集中しており、30億ポンド近い黒字を計上している。BAEシステムズは、防衛産業におけるグローバルグループとして、米ボーイング及びロッキード・マーティンに続く世界第3位である。

 

  • 自動車部門 自動車部門は、突然変異ともいえる奇妙な成功を遂げた。イギリスの自動車産業は輸出志向の高級車へと路線を切り替えた。生産台数の77%近くが輸出される一方で、イギリス領内で販売される新車の80%(主としてハイエンド車種)は輸入車である。この部門の貿易収支は黒字になっている。
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