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2015.06.12
カントリーリスク&経済レポート

トルコ経済、10年にわたる順調な改革と高成長率の末、成長率の維持に苦労

Turkey Panorama: After a decade of well-implemented reforms and high growth rates, the Turkish economy struggles to maintain the same performance
  • コファスの予想では、今年の成長率は3.5%。堅調な成長率とはいえ、5%の潜在成長率の予想を下回る。
  • 今後のトルコ経済の主要課題は、トルコリラの不安定さ、回復基調にあるとはいえ今なお脆弱な欧州経済の成長、そして主要輸出市場に重くのしかかる地政学的リスクであると考えられる。
  • 近年の世界経済の状況と地域の緊張による影響を最も大きく受けたのは繊維・衣料部門である。
  • 製薬部門は、厳しい制限と利益率の低下にもかかわらず、堅調。

この10年間、トルコ経済は主に国内消費によって平均4.9%の成長率を見せてきた。特に、世界的な金融危機後、トルコは世界の低金利・緩和的な金融環境の恩恵を受け、これが国内消費と投資支出を支えた。しかし、アメリカ経済の回復と連邦準備制度理事会による出口戦略が世界経済を新たな時代へと導いている。

 

これらの新たな経済情勢、特に外国為替相場は、トルコ経済に新たな課題を突きつけている。変動の増大は政情不安と相俟って、消費と投資支出に悪影響を及ぼしている。ドル高の影響で生産コストが上昇している。輸出はユーロ安と地域の緊張の高まりに悩まされており、トルコ経済は成長率の維持に苦労している。

 

トルコの投資率及び貯蓄率(GDP割合)

 

turkey_graph

トルコ経済にとってのもう一つの課題は、輸出収入の増加のため、より付加価値の高い製品を生産することだ。トルコの輸出品の多様化と高度化は、トルコの伝統的な輸出市場におけるリスクの上昇と並んで、顕著な問題となっている。

 

 コファスにおいてMENA(中東・北アフリカ)担当エコノミストを務めるSeltem Ilyigunは次のように語っている。「この10年で、トルコ経済は経常収支赤字の増加なくして成長できないことが示されました。赤字の主な原因は貿易収支にあります。さらに、この状況の一因となっているのが、トルコの輸出企業の大半が相対的に平均的な技術水準しか持ちあわせていないために競争力が低下しているという事実です。高度な研究開発内容を含むトルコ製品は、製造輸出品全体の3%に過ぎません。トルコの輸出品の高度化があまり進んでいない事実は、トルコの輸出量と輸出額の増加を妨げる障害となっています。また、この事実は2002年以降伸びていた輸出が2014年及び2015年初めに停滞した原因ともみられます」

 

これらの課題にもかかわらず、トルコは、財政赤字と公的債務残高の低さ、成長率の低迷に伴う対外格差の縮小など、いくつかの経済的強みをもつ。さらに、イランとP5+1諸国との間で協議がまとまれば、トルコ企業は新たな投資や輸出の機会を獲得できる可能性がある。

  

世界経済状況の影響を最も受けたのが繊維・衣料部門だ。地域の緊張もまた、トルコの繊維・衣料企業の輸出実績を圧迫している。コファスは、繊維部門のリスク評価を「中程度」から「高程度」に引き上げた。輸出収入に対するユーロ上昇の限定的な影響、輸入・生産コストの増加、欧州の中核市場の脆弱な回復、ウクライナとロシアで記録された損失、そして最後に企業の支払動向の低下がその主たる理由だ。衣料部門は現在、中程度のリスク水準にあるものの、その動向は慎重な監視が必要だ。メーカーが主に近隣諸国及びアメリカに対する輸出の増加を図っていくことが、この障害を克服する有望な戦略と思われる。

 

製薬部門は、厳しい規制と利益率の低下にもかかわらず、堅調な成長を維持している。コファスは、この部門のリスク水準は低いと評価している。同部門は、トルコ国民の医療サービス利用の増加、一人当たりの国民所得の増加及び一人当たりの医薬品支出の増加の恩恵を受けている。基準価格制度によって価格が規制され、その結果、新たな技術投資が抑制されているが、同部門は安定した業績に必要な確固たる基礎を維持している。債権回収は安定しており、国税納付の遅延も確認されていない。

 

コファスが注目している部門リスクは次のとおりである。

 

金属部門(鉄金属及び鉄鋼を除く):リスク水準は非常に高い。企業が直面している主なリスクは、原料供給の輸入依存度の高さ、物価の下落、そして為替レートの乱高下が借入コストに与える悪影響である。一部の企業は、国際決済通貨の上昇によるキャッシュフローの悪化に直面している。

 

自動車部門:リスク水準は中程度。売上は2014年に10%縮小したものの、2015年初めから堅調な伸びを見せている。同部門に属する企業は概して業績が堅調で、これが支払動向に関連するリスクを低減している。

 

食品部門:リスク水準は中程度。食品生産者にとっての最大のリスクは、2015年初めから続く、厳しい冬の気象条件による生産コストの上昇である。コストの増加による悪影響を特に受けているのは中小食品生産者だ。

 

建設部門:リスク水準は非常に高い。中央銀行による2014年始めの金利の急激な引き上げ、経済活動の鈍化及びインフレ率の上昇により、住宅需要が低下した。かつては住宅販売の活性化に最も重要な要素の一つであった低金利と労働市場の安定は、今後の住宅市場の下支えには不十分と思われる。

 

 

 

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  • Household consumption continues but for how long?
  • Slump in private investments
  • Challenge of export sophistication
  • Textile and clothing sector
  • Pharmaceutical sector
  • Sector risk assessments 

 

 

 

 

 

 

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