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2014.09.11
カントリーリスク&経済レポート

2013年には経済成長の先頭を走ったルーマニア-2014年の後退から巻き返しはなるか

Romania at the front line of economic growth in 2013 – but will it catch up after the contraction in 2014?
好調な経済のおかげで、ルーマニアは欧州の景気回復の牽引国の一つとなった。2013年のGDP成長率は3.5%と期待を上回った。成長に大きく貢献したのは農業部門・工業部門であり、特に、主として海外の顧客に供給を行う自動車製造部門が大きかった。2014年のルーマニアはこの成長ペースを維持できないだろうが、引き続き展望は明るい。

 

 

 

2013年:成長の一年

 

2013年、ルーマニアの実質GDP成長率は期待を上回る前年比3.5%となり、第4四半期に5.1%と最高の成長率を記録した。この年の成長の主役は輸出部門であり(13.5%と大幅な増大を記録した)、特に農産物及び自動車の輸出が大きかった。

 

ルーマニアは欧州連合のなかでも農業への依存度が最も高い国であり、労働人口の約31%が農業に従事している。したがってルーマニアの経済生産は気候条件と強く連動している。2013年夏の農産物収穫は非常に好調で、供給過剰につながった。2013年、ルーマニアの農産物生産高は170億ユーロ(25%増)に達し、これはEU28カ国の農業生産高の5%近くに相当する。

 

農産物輸出以外では、自動車生産もルーマニアの対外貿易に大きく貢献した。ルーマニアはEUのなかで人件費が最も低い国の一つであり、OEM企業のあいだで工場の立地先として人気がある。主役となっているのはフォードだが、ルノーもルーマニアのブランド「ダチア」に新たな生命を吹き込んでいる。自動車対外輸出部門の明るい展望と国内生産能力の増大は、この国にとって付加価値を生み出した。

 

コファスの中央ヨーロッパ担当エコノミストGrzegorz Sielewiczは次のように説明している。「ルーマニアは2013年、欧州で最も高い成長率を記録した国の一つです。3.5%という成長率は、景気後退に陥ったユーロ圏はもとより、CEE平均の1.2%も大きく上回りました。この力強いパフォーマンスの主役は、好調な農業生産と、高水準となった輸出です。しかしどちらにせよ持続可能な要因と考えるわけにはいきません。先進諸国の景気回復はルーマニアの対外貿易、とくに自動車部門にとっては追い風になるでしょうが、国内の状況が引き続き制約となるでしょう

 

 

各部門のリスク・バロメーター

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輸送:ルーマニア経済の柱

 

ルーマニアの輸送部門は同国経済の重要な柱である。2012年の貨物輸送量はGDPの108%に達した。これはEU平均の95%を上回っているが、近隣諸国の大半よりも低い。最も高いのはブルガリアとポーランドで、それぞれ174%と137%である。

 

輸送サービスに対する需要の増大、特にルーマニアの主要貿易相手国であるユーロ圏の景気回復に伴う需要増大を考えれば、輸送部門の今後の見通しは明るい。とはいえ、輸送サービスへの需要増大が、同部門で活動するルーマニア企業すべてにとって純利益の増大に直接つながるわけではない。激しい競争によって価格が低下し、固定費が変動しないなかで、利益率の低下を受け入れざるをえない可能性がある。コファスでは、輸送部門のリスク水準は中程度になると予想している。

 

農業:2013年の収穫は好調

 

ルーマニアは、他のCEE諸国よりも大幅な農業生産増大に恵まれた。とはいえ、農業によるポジティブな貢献をこの国の経済生産における恒久的な要因と見なすわけにはいかない。さらに、各部門のリスク・バロメーターに示したように、農業食品部門は、固定費の圧迫のもとで多くの小規模な事業者が利益を争うという状況にあり、リスク水準は中程度となっている。

 

外部要因という点では、ウクライナの混乱はルーマニアにとって利益にある可能性がある。最近の情勢に伴い、ルーマニアが黒海沿岸地域の穀物市場で主要なプレイヤーとなる可能性が出てきた。この地域では依然としてロシアとウクライナが有力な穀物生産国であり、それぞれルーマニアの4倍、3倍の生産量を誇っている。だが今年の生産量は、ロシアでは4%、ウクライナでは実に10%も減少すると予想されている。世界的な需要が安定しているなかで、ルーマニアは国内生産能力を強化し、輸出価格に影響力を及ぼせるようになるだろう。 

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2014年:巻き返しは可能か

 

コファスでは、2014年のルーマニアは、CEE諸国のうちGDP成長の加速が見られない二カ国のうちの一つになると予想している(もう一国はラトビア)。力強い成長のダイナミクスが繰り返されるとは考えにくく、今年下半期にはベース効果が明らかになるだろう。2014年の実質GDP成長率は2.5%と予想される。この予想成長率では、ルーマニア経済はCEE諸国に関する予想平均成長率である2.4%に近いものになる。

 

2014年の農業生産高に関する予測はさまざまだが、2013年に比べれば収穫量が低下するというのが最も現実的なシナリオだろう。輸出は引き続き新車需要に牽引され、ルーマニア工業部門のパフォーマンスに力強く貢献するだろう。国内需要も家計支出の上昇に伴い改善の兆候を見せているものの、やはり信用供与の伸び悩みにより制約されるだろう。企業はまだ経済の回復が持続可能であるとの確信を十分に持っていないため、設備投資の成長は民間消費ほどの増大は見せないだろう。

 

コファスの中央ヨーロッパ担当エコノミストGrzegorz Sielewiczの結論は、次のようになる。「2013年の経済成長に貢献した要因は持続可能ではないので、昨年の経済パフォーマンスがあのような力強いペースで続くことはないでしょう。このことは、2014年の第1・第2四半期に厳密にはリセッションが生じていることからもすでに裏付けられています。とはいえ、ユーロ圏諸国向けの大量の輸出と、経済を徐々に内需志向に調整していくことにより、2014年は2.5%という安定的な成長が維持されるでしょう」。

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