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2014.10.24
カントリーリスク&経済レポート

グローバル貿易:危機以前の水準への回復は難しいが、成長ポテンシャルは見られる

グローバル貿易:危機以前の水準への回復は難しいが、成長ポテンシャルは見られる

グローバル貿易は引き続き危機による悪影響に襲われている

 

2008~09年の経済危機以来、国際貿易の成長率は減速している。これは何よりもまず、グローバル経済の成長率が長期的に低下していることの影響である。グローバル貿易に特にダメージを与えているのは、主要な新興市場諸国における構造的かつ一時的な減速である。というのも、これら諸国の経済規模は輸出の急速な拡大に密接にリンクしているからだ(この20年間における経済規模の拡大は、先進国の2.2倍に対し、新興市場諸国では6倍となっている)。さらに経済危機による二つめの悪影響として、原材料需要の低下が挙げられる。主要な新興市場諸国において、2014年半ばの時点で年間輸出成長率が最も高かった国(ポーランド、ルーマニア、インド、フィリピン)は、原材料ではなく、主として工業製品の輸出国である。

多くの国で輸出実績が期待外れに終わったことは、貿易を阻害する保護貿易主義[1]の増大とも重なっている。アルゼンチン、ロシア、インドが2008年7月から2014年7月のあいだに導入した保護貿易政策は合計で250件以上[2]に達しており、これは米国、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアの合計の約2倍に相当する。最近ロシア政府が導入したEU、米国、カナダ、オーストラリア産の農産食品禁輸措置によって、同国は最も保護主義的な国となっている。

 

 

新興市場諸国によるバリューチェーン参加がグローバルなトレンドに

 

危機が貿易に与えた影響は、2000年代以降、製造プロセスの国内化の重視が進んだことで、さらに強調されている。2008~09年の危機がグローバル貿易に急速に波及したのは、まさにこうした傾向があったからである。グローバルなバリューチェーン(GVC)の柱である中間財[3]の貿易は、2009年に25%落ち込んだ。自由貿易協定が増加しているにもかかわらず、域内貿易は今なお制約されており(アジアは例外だが)、危機の影響を相殺するには至らなかった。多くの新興市場地域では総輸出に占める域内貿易の比率が依然として低く、アフリカで11%、ラテンアメリカで20%、CISで15%となっている。

それにもかかわらず、GVCが危機に対して反発する動きがあることから、中期的な成長展望は明るいものと思われる。回復の余地はかなり大きいと見られるが、これは主として新興市場諸国がグローバルなバリューチェーンに統合されることによるものである。その一例として挙げられるのがアフリカだ。アジアにおける中産階級の増大を背景に、製造コストが人件費に大きく左右される場合(繊維・衣料部門など)には、アフリカでの企業設立が有利となる可能性が高い。

 

 

予測:貿易の成長は、限定的ではあるが安定感を増す

 

コファスの予測では、2015年のグローバル貿易の成長率は5%前後に加速するだろう。これは過去2年間に比べ高い水準である。

カントリーリスク部門を率いるJulien Marcillyは、次のように説明する。「主要な先進国・新興市場国の潜在的な成長力が落ちているため、国際貿易の成長率が危機以前の水準に戻るとは考えにくくなっています。とはいえ、暫定的ながらグローバル貿易の加速が見られ、バリューチェーンの国際化も続いていることから、グローバル貿易の成長率は2015年に上昇するでしょう」

成長率だけでなく、貿易の構造にもある程度の変動が生じるだろう。先進国・新興市場国におけるサービス部門の拡大は、これに類した貿易の拡大につながる可能性が高い。このプロセスの速度は、テクノロジー発展のペースに大きく依存するだろう。こうした展開には一つ大きな利点がある。サービス部門の変動が一般に工業部門のそれに比べて顕著ではないことを考えれば、グローバル貿易の変動がより緩やかなものになる可能性が高いことである。

こうした予測をもとに、コファスでは、今後数年間、グローバル貿易の成長は控えめではあるが、安定感を増したものになると想定している。

[1] 保護貿易主義とは国の企業を他国の競合から守ることを目的とした国の政策を含む。保護貿易主義は世界銀行によって定義され、さまざまな形式を含む:保護条項やダンピング防止措置、補助金と補償措置等

[2] 参考資料:GTA

[3] 中間財:輸入された製品で、必要な処理が行われ再輸出されるもの。

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