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2016.03.16
カントリーリスク&経済レポート

中国では、支払い遅延を免れた企業はほとんどない。2015年、支払い遅延の影響を受けた企業は全体の80%

business in china

企業の与信リスク管理に関する調査(中国企業1000社の回答を得た)によれば、企業の支払い動向は2015年に引き続き悪化し、10社のうち8社は支払い遅延を経験している。信用保険分野における世界有数のグループであるコファスは、2016年のGDP成長率は6.5%に減速すると予測している(2015年は6.9%)。多くの部門で見られるレバレッジ率の高さと生産能力過剰、人民元に対する下降圧力、株式市場のボラティリティが、2016年の中国市場の懸念点である。短期的には、支払い不履行状況の改善は期待できない。

 

与信手法は慎重になったが、企業の支払い遅延は続く

2015年、中国に本拠を置く企業が提示した平均与信期間は再び短縮した。顧客に信用ファシリティを与える際の手法がこれまでより慎重になったことを反映している。これはほぼ確実に、近年の支払い動向が振るわないことと、信頼感の低下及び成長予測の減速が重なった結果であろう。

 

それにもかかわらず、リスクは増大している。調査に回答した企業の80.6%が2015年中に支払い遅延を経験している(2014年は79.8%)。これらの企業のうち、58.1%は遅延額の増大も報告している。平均遅延期間が150日以上だったと回答した企業も比率も上昇した(4ポイント上昇、すなわち全体の10%)。調査対象企業のうち、17.9%が超長期(180日以上)、年間売上高の5%を越える額の遅延に対処しなければならなかった。超長期の支払い遅延の増加によって、企業財務への圧迫も増大している。

 

これは、中国銀行規制委員会が発表した不良債権(NPL)の数値とも整合している。2015年末の時点でNPL率は1.59%と、2009年以来最も高い水準となった(2013年は1%)[1]。NPLは2015年第1四半期~第3四半期に50%以上増大した。こうした背景のもとで、支払い不履行が増加するリスクを過小評価すべきではない。

[1] 出典:中国銀行規制委員会

 

 

2016年は複数の課題が山積する憂鬱な経済状況に

現在、生産能力過剰と収益性の低さに苦しんでいる中国企業は、債務不履行に陥る可能性が高まっている。政府が生産能力過剰と「ゾンビ」企業の問題に取り組むことを決意したためだ。信用成長は減速しているが、民間債務はGDP以上のペースで増加している。中国ではまだレバレッジ解消のプロセスが始まっておらず、リスクは増大している。民間非金融部門の未払い債務は、対GDP比で、2008年6月の114%、2013年6月の176%に対し、2015年6月の時点ではGDPの201%に達した。

 

2015年における中国のGDP成長率6.9%は過去25年間で最も低い数値であり、コファスが2016年について予測する6.5%は、最低記録をさらに更新する。バランス調整のプロセスとグローバル需要の低迷により、下降トレンドの勢いは増している。当局は、消費・サービス部門主導に向けて成長のバランスを調整するために必要な改革を実施している。こうしたバランス調整は、中期的にはポジティブな効果を発揮するだろうが、短期的にはネガティブな影響を与えており、企業にとっては、利益への打撃と信用リスクの悪化という点で、厳しい試練となっている。

 

中国の株式市場は新たな下落(1月の第1週で16%の下落)とボラティリティの局面を迎えている。マージンファイナンス(投資家が借りた資金で株式を購入する)の多用により、信用リスクが増大し、下降スパイラルが強化されている。その一方で、人民元は前例のない相場を記録し、1月第1週には対ドルで5年ぶりの元安となった。元の評価は、中国経済の減速に対する懸念により悪化した資本流出による影響も受けている。

 

金融政策面では、中国人民銀行が2014年11月に緩和局面に入り、それ以来、プライム貸出レートを6回(165ベーシスポイント)引き下げ、銀行の準備預金率(RRR)を5回(300ベーシスポイント)引き下げ、経済に流動性を注入した(2016年1月、さまざまなツールを介して1兆5000億人民元)。だが、これまでのところ金融緩和措置はあまり効果をあげていない。

 

「政府の戦略は曖昧で、当局は二つの目標の板挟みになっています。一方では『ハードランディング』を回避し雇用を守るためにGDP成長を支えつつ、他方では債務バブルのリスクを管理するというバランスを取る必要があります。同時に、中国の企業は、(金融緩和作にもかかわらず)資金調達コストが急上昇するなかでのレバレッジの高さ、収益性の低さ(一部の部門における大幅な生産能力過剰)、外為・株式市場のボラティリティといった試練の増大に直面しています。金融緩和措置は2015年にはさほど効果をあげず、中国当局がハードランディング回避に向けて努力するなかで、さらに景気刺激策が打たれるものとコファスでは予測しています」(コファスのエコノミスト、Charlie Carré)

 

高リスク部門:建設、金属、IT

コファスの調査によれば、最もリスクが高いのは建設部門であり、状況は急速に悪化している。建設部門において遅延となっている掛売り販売のうち、28.3%が150日以上で、同部門の回答企業のうち57%が、売上高の2%以上が6ヶ月以上の遅延による影響を受けているとしている[2]。金属及びIT部門は、150日以上の支払い遅延となった売上がそれぞれ13%、15.2%あったと報告している。電気通信部門も圧迫を受けている。もっとよい状況の部門もあるものの、小売、自動車といった家計消費関連の部門でさえ、支払い状況の悪化を経験している。

 

コファスは2003年から中国における企業与信リスク管理調査を実施している。2015年の調査は第13回となった。さまざまな部門の企業1000社が、2015年10月から11月にかけて調査に参加した。この調査によって、中国に本拠を置く企業が経験する支払い動向及び与信管理慣行がよりよく理解できるようになる。

[2] コファスでは、6ヶ月以上の延滞債権の回収には懐疑的である。コファスの経験からすると、支払い遅延が6ヶ月に達した場合、そうした遅延債権の80%はまったく回収できない。こうした長期の支払い遅延         の額がある企業の年間売上高の2%を超えると、その企業の流動性が問題となり、サプライヤーへの支払い能力が疑問となる。

 

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  • Payment survey background
  • Corporate payment experience in 2015
  • 2016 - Adjustment process is till underway
  • Sectorial analysis: no one spared

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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