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2015.11.16
カントリーリスク&経済レポート

エジプト:緩やかな回復と構造上の課題

 

  • 政治の安定性の改善、経済改革、海外投資がエジプト経済の回復を支えている
  • コファスによる2015年度の予測成長率は4.4%
  • GCC諸国からの資金援助と外国直接投資(FDI)にいまだ依存
  • 2015年の経常収支は赤字、財政赤字は高いまま
  • 観光部門と自動車部門がわずかに回復するも、安全保障上の問題と脆弱な経済回復が課題

 

経済見通しの改善

 

エジプト経済は、2011年の革命による社会的混乱と暴動で大きな打撃を受けたが、政治の安定性の改善や経済改革、海外投資により軌道に戻りつつある。当局は最近、2014年度(7月から2015年6月までの会計年度)の実質成長率を、2011年から2013年の間の平均成長率2%からわずかな上昇となっていた2013年度の成長率2.2%に対し、4.1%と発表した。この最新の結果は、製造部門の成長、(混乱による減少の後での)高い観光収入、好ましいベース効果によるものである。需要の側では、成長の主な牽引役は個人消費であった。コファスでは、2015年度の成長率は4.4%に加速すると予測している。

 

回復はいまだ脆弱、双子の赤字と安全保障問題が課題

 

公共消費と個人消費はともに成長が続くとしても、そのペースは、高い失業率と財政赤字の削減を狙った補助金改革により引き続き抑制されるだろう。エジプトの財政状況は改善しているにもかかわらず、財政赤字はGDPの10%を大幅に上回ったままである。加えて、エジプトはいまだに大きな対外格差、貧弱なインフラ、ミクロ経済のゆがみと競争力不足に苦しんでいる。2014年度の経済収支は、主として貿易赤字の拡大により、前年度の27億米ドルから122億米ドルに跳ね上がった。原油価格が低いままであれば、湾岸諸国からの外国直接投資(FDI)や無償資金協力、送金が減少する恐れがある。湾岸諸国は、エジプトの成長パフォーマンスの最大の貢献者である。これにより、切望されているエジプトのインフラ投資の資金が制限されることになる。

 

地域的、国内的安全保障上のリスクは、観光部門(エジプトの外国為替収入のおよそ20%を占める)の回復のみならず、ビジネス環境にも重くのしかかっている。安全保障上の問題と政治の不確実性による資本の流出により、外貨準備高は2010年の輸入の7.6ヶ月分から、2014年は2.4ヶ月分にまで減少している。金融システムでは、外国為替の不足が続いている。これにより、機械や原材料の輸入に必要なドルを持たない中小製造業者が特に打撃を受けている。

 

「政治の安定性の改善と当局の構造改革へのコミットメントが、エジプトの経済パフォーマンスを支えています」とコファスの中東・北アフリカ地域担当エコノミストのSeltem Iyigunは言う。「国際的な財政支援が、この国の成長の重要な柱となっています。将来的には、固定資本投資の加速による経済回復も期待されます。経済回復と政治の安定性により、財政不均衡が是正されているのです。」

「それでもなお、持続的な成長は、経済改革の継続的な進展と一層の政治の安定性にかかっています」Seltem Iyigunはこう付け加える。「以上のような改善にもかかわらず、エジプト経済には依然として構造的な弱さがあり、民間部門の成長の重荷となっています。脆弱な対外収支、競争力の低さ、安全保障上のリスクといった難しい課題は残されたままです。」

 

慎重な部門の回復

 

  • 観光部門:2011年の革命による社会的な混乱と政治の不確定性に見舞われた後、観光部門は主に政治の安定性の改善によりわずかに回復した。2015年の前半には、エジプトを訪れた観光客の数は前年から8.2%増加し、480万人に達した。政府は、2015年通年で1000万人の観光客を呼び込み、観光業界の総収益は75億ドルから80億ドルになると見込んでいる。ホテルや宿泊施設の2015年の建設数は、2012年の水準をわずかに上回り、1140件となる見通しである。こうした改善にもかかわらず、安全保障上の課題が残っているため、エジプトの観光部門が混乱前の水準に戻るには時間がかかるだろう。
  •  自動車部門:自動車部門も、アラブの春による需要の落ち込みからの回復により恩恵を受けている。2014年の乗用車の売り上げは急激に伸び、2013年比で55.5%の増加となった。経済回復と政治の安定性の高さが、次期の売り上げの支えとなるだろう。しかし、制約がこの部門にのしかかっている。ドル不足や不明瞭な業界戦略、近隣諸国の自動車部門の成長により、エジプトからの撤退を強いられている企業もある。 
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