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2016.05.17
カントリーリスク&経済レポート

最悪の事態に陥っているブラジルから読み取れることは?

What to expect from Brazil’s perfect storm?
ブラジルは最悪の事態に陥っている。長引く政治的危機と深刻な経済不況により、信頼感指数は壊滅的な水準に落ち込んでいる。そこに、この度さらにジルマ・ルセフ大統領の弾劾裁判が始まった。本格的な景気回復は2017年まで見込めないだろう。ブラジル経済は2015年に3.8%縮小し、さらに2016年にはGDPが3%下落すると見られる。

 

2016年5月12日、上院での弾劾裁判承認の採決を受け、ジルマ・ルセフ大統領は一時職務停止処分を受けた。ルセフ大統領の統治に対する訴訟で問われているのは財務責任法に対する違反で、一部は財政上の不正に基づくものである。現在はミシェル・テメル副大統領(ブラジル民主運動党)が大統領代行となっており、上院では告訴を審議するための180日間という時間が与えられた。上院で3分の2が支持して可決すれば、ジルマ大統領の弾劾が決定する。その場合は2018年までのテメルが残りの任期の大統領を務めることになる。

 

ジルマ政権に対する蜂起の主な原因は、カーウォッシュ(洗車作戦)スキャンダルだ。捜査を通じてブラジルでも最も影響力を持つ複数の実業家や政治家が法の裁きを受け、さらに、ペトロブラスからの資金が選挙活動に使われ、議会での支持票の買収と個人の懐に流れたのではないかという疑いが浮上した。既にペトロブラスは2014年のバランスシートで62億レアル(約23億米ドル、GDPの0.1%)の切り下げを行っていたことが示されており、カーウォッシュスキャンダルの捜査によって明らかになった汚職の手口により、追加費用として不適切に資本化されている。

 

弾劾を支持する方向のニュースが入るたびに、市場は肯定的な反応を示してきたが、副大統領が属するブラジル民主運動党も同様に汚職の捜査を受けており、現政権に対する実行可能な代替案とはなりにくいため、力強い反発は期待できないだろう。

 

 

新政権による決議を待つ経済は、今や破たん寸前

 

経済面では、2015年の結果(GPD対前年比3.8%減)は1990年以降で最悪のもので、ブラジルが直面する主要な問題は一つも改善されていない。(人為的に低く抑えられた)管理価格の調整と、為替レートの大幅な下落により、インフレは年率10.7%に達した。これは、ターゲットの中間値である4.5%をはるかに上回る。財政調整がうまくいかず、財政赤字と同様、公的債務も2015年に悪化した。コファスは9月にブラジルのカントリーリスク評価をA4からB(無視できないリスク)に引き下げたが、さらに2016年1月に、C(高リスク)に再度引き下げている。信用格付け機関大手3社は、ブラジルをジャンク級の格付けに引き下げた。

 

この政治的行き詰まりが完全に解決されるまでは、経済の回復も始まらないだろう。

最初に乗り越えなければならない壁は、2016年の財政結果である。現在、2016年3月までの12か月間の累積赤字は2.28%となっており、したがってジルマ政権が提案する1.6%という数字は既に非現実的なものと化している。

 

大統領職を代行するテメルも、直接選挙で選ばれたわけではないこと、そして所属政党がカーウォッシュスキャンダルに深く関与していることから、国民からは幅広く支持を得られているわけではなく、企業の信認感の回復はごく短期間の一時的なものにとどまりそうである。

短期的に回復が見込まれる指標は、貿易収支とインフレの2つのみである。対外貿易は、輸入・輸出共に収益面では悪化している昨年からの為替レートの急激な落ち込みによって国内製造品の競争力が高まったにもかかわらず、弱い通貨によって米ドル換算での輸出額が減少した。これまでのところ、輸出量の拡大分は収益を押し上げるには至っていない。

 

セクターリスクは深刻さを増すと予想される

 

カーウォッシュスキャンダルの波及効果と長引く不況とで、破産件数は最高記録を更新した。2015年にブラジル国内でチャプターイレブンを申請した企業の数は1,287社となり、前年比で55%増加した。さらに、2016年第1四半期だけでも、既に409件の申請が出されている(前年比114%)。この数字は、2016年にはさらに下落傾向が強まり、ブラジル経済は2年連続で縮小するだろうという見方を裏付けるものだ。

 

PR Brazil 2016.May

 

 

 

 

 

工業生産は24カ月連続で減速している。2016年2月までの12か月間で工業セクターは9%縮小し、依然として改善の兆しは見えていない。求人市場が極めて急速に悪化しており、不透明さを増す環境にあって起業家も投資を控えている中、国民は消費に対して間違いなく消極的になっている。

 

この好ましくないシナリオは、ブラジル経済の他の主要な部門にまで波及し、破産件数を押し上げている。コファスのセクター別バロメータによれば、ブラジルの主要セクターの活動は現在いずれも高いリスクにさらされている。建設、自動車、及び鉄鋼業においては、状況はさらに悪く、非常に高いリスクを負っている。 

 

危機を脱する容易な道はなく、国民は汚職にうんざりしている。そのため、短期的に信任感が回復する可能性は低い」と、コファスのラテンアメリカ地域担当エコノミストであるPatricia Krauseは指摘する。

 

 

3月13日に行われた政権に抗議するデモには約300万人の参加者があり、ブラジル史上最大規模のものとなった。この抗議行動により、国民は現政権に対して不満を抱いているだけでなく、現在捜査の対象となっている政治家全般に対して広く不信感を抱いていることが明らかになった。さらに、政争の行方がどうなろうと、議会がここまで分裂している以上、強く望まれているこの国の構造改革は今後も遅々として進まないだろう。

 

結論として、明らかなことが二つある。速やかな景気回復は期待できない。信頼感指数は幾分回復するだろう。2017年からはGDPも緩やかに回復する可能性がある。ただし、既にこれは経済活動の観点からは失われた10年になると予想しているエージェントもある。

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