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2016.09.07
カントリーリスク&経済レポート

米国の製薬企業、「楽観」「悲観」の二つの矛盾するシナリオに直面

coface's publication
  • 医療費負担適正化法は保険加入患者と保険会社の均衡の取れた関係に貢献する―ただし価格問題には手付かず。
  • 米国大統領選:処方薬価格引き下げ措置
  • 2016年は処方薬価格がさらに9/3%上昇すると予想される。
  • 北米の製薬部門の評価は「低いリスク」へと改善。
  • 長期的には価格下落が予想され、製薬企業にはマイナスの影響を与える。

 

官民による順調な投資にもかかわらず、米国の医療指標は主要先進国12カ国の平均を下回る。

 

医療費負担適正化法の段階的な施行により、手頃な価格の医療保険に対する国民のアクセスは改善されている。大統領選候補者の政策公約に現れているもう一つ重要なポイントは、高額な処方薬の価格引き下げである。米国民の個人破産のうち5件に3件は、医療関係の債務である。医療保険の加入状況に格差があり、他の先進国と違って、製薬会社が薬価を自由に設定できるからである。薬価の自由設定によって、高額の研究開発投資と、特許権による保護期間が世界的に見て相対的に短いことによるコスト高が正当化されている。2008~09年に米国経済が受けたショックにもかかわらず、薬価は上昇し続けており、下降局面は一度も見られない。

 

米国は現在、医療に投資されるリソースという点で、先進国中でトップとなっている(2014年で対GDP比17.1%)。それにもかかわらず、結果は西側の基準を大幅に下回っている。平均余命は低く、肥満率は2倍、乳幼児死亡率も平均より高く、高齢者のあいだでは少なくとも2つの慢性疾患が見られる高い有病率。[1]

 

 

薬価低下というシナリオは、短期的には可能性が低い。

 

負担者側の状況が細分化されており、その交渉力が低下していることから、連邦政府は(欧州諸国の公的制度と異なり)薬価を規制することは困難であると考えている。さらに、医療費負担適正化法は医療保険の展開のみを対象としており、薬価引き下げを狙うものではない。

 

したがってコファスでは、米国における薬価については2つのシナリオを予想している。

 

短期的には、2016年末までに薬価は9.3%上昇すると予想している(2015年は7.2%、2014年は8.5%の上昇)。主な原因は、非常に高価な専門的薬剤が市場に登場するためである。これは製薬企業にとっては有利な状況であるため、コファスは北米の製薬部門の評価を「低いリスク」に格上げした。

 

長期的には、制度改革が行われると仮定すれば(その可能性についてはますます賛否が分かれているが)、想定される薬価の下落によって患者にはポジティブな影響があるが、製薬企業の収益性は低下するだろう。この点を説明するために一例を挙げるならば、仮にフランスの薬価(欧州で見られる薬価としては低い範囲にある)を米国に適用してみると、「ハーボニー」という薬品による収益は45%低下する。

研究開発に与える影響も大きいだろう。ある分子製剤を発売するまでコストが10億米ドル~15億米ドルであることを考えると、薬価の低下は研究開発投資の大幅な削減につながる可能性がある。欧州(公的医療制度によって薬価が設定される)における事業の比重が大きい製薬企業の場合は、影響はさらに大きくなり、したがって研究開発に投資しようというインセンティブが低下するだろう。

 

 

 

[1] 先進国12カ国(ドイツ、オーストラリア、カナダ、デンマーク、フランス、日本、ノルウェイ、ニュージーランド、オランダ、イギリス、スウェーデン、スイス)の平均指標

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