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2019.04.02
カントリーリスク&経済レポート

エネルギー政策で正反対に向かうメキシコとブラジル

Mexico and Brazil taking opposite directions in terms of energy policies
  • 2019年は、グローバル石油市場のボラティリティの高さが顕著に
  • コファスの予測では、2019年のブレント原油価格は平均65米ドルに
  • メキシコでは、PEMEXが直面する財務上の困難が解決せず
  • ブラジルの石油政策が中期的にポジティブな波及効果をもたらす

2018年は、さまざまな要因により、グローバル石油市場のボラティリティが印象づけられた。米国による対イラン・対ベネズエラ制裁によって供給は顕著な影響を受け、需要は貿易紛争の影響と、景気の山を越したことの結果に対する懸念により低迷した。コファスでは、2019年のブレント原油価格を平均65米ドルと予測している。これは、2018年に広がった不確実性が今年解消されるとは期待できないためである。

ラテンアメリカ最大の経済規模であるブラジル、メキシコ両国では、2018年に新たな大統領が就任し、選挙戦においてはエネルギー政策が重要な柱となった。中期的には、グローバル石油市場の動揺が予想されるなかで、両国は反対の方向をとりつつあるように思われる。

  • メキシコにおいては、左派のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領が、エネルギー市場への民間投資を認めた2013年のエネルギー改革を厳しく批判しており、石油産業に関する限り、民間セクターに対して防衛的な姿勢をとっているように見える。新規の石油関連入札は3年間停止されており、米国からの輸入燃料への依存を低減するべく、高コストの精錬所が建設されている。また、国営石油企業であるPemexについては債務レベルが警戒すべき水準にあり、先日は信用格付けも引き下げとなったにもかかわらず、石油セクターにおける同社の優位は強化されている。

Pemexは6カ年事業計画のもとで、2024年末までに生産量を248万バレル/日(bpd)に引き上げることを目指している。ただし、石油生産の減少傾向を反転させるためには巨額の投資が必要であることを考えると、この目標は非現実的に思われる。国際的な格付機関であるフィッチ・レーティングス[1]は、Pemexが生産量・備蓄量の減少傾向に歯止めをかけるには、120~170億ドル(メキシコのGDPの約1.2%)の投資が必要になると指摘している。また市場では、現行のエネルギー政策が企業の財政収支に悪影響を及ぼし、国の債務残高の点でリスクが生じるのではないかという懸念も高まっている。

  • ブラジルでは、新任の右派政権による石油産業に関する計画が、明るい展望につながる可能性がある。石油生産は今後数年間で増大に向かう見込みである。OPECは3月の報告書のなかで、2019年、ブラジルは年間石油生産量を36万bpd増やし、米国産シェールに続く、非OPEC諸国中第2位の増産になるだろうと指摘している。「レジリエンス・プラン(復興計画)」は国営石油会社ペトロブラスのレバレッジ解消を促進し、同社の投資による価値創出を改善するとともに、民間投資家向けの機会を創出することになろう。

[1] フィッチ・レーティングス、Fitch Baja Calificación de PEMEX a ‘AA(mex)’; Perspectiva Negativa. 2019年1月29日。https://www.fitchratings.com/site/pr/10060977 で閲覧可能。

 

 

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