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2019.05.21
カントリーリスク&経済レポート

模倣組から先行組へ:5G分野での中国の野心を探る

From copycat to early bird: Taking stock of China’s 5G ambitions

中国は5G分野へのアプローチを上手く取りまとめており、すでにいくつかの成功が明らかになっている。だが、特にハイエンド製品については中国は依然として輸入に頼っており、ITセクターは保護主義の脅威に晒されたままだ。さらに、中国企業に5Gネットワークの展開を委ねることは、多くの受け入れ国にとってサイバーセキュリティ上のリスクになると見られている。米国はファーウェイの機器・設備を禁止しつつあり、同盟各国に対しても同じ行動を求めている。これは中国の5G分野の将来的な成長にとって障害になるかもしれない。

 

先発組の優位

 

3G・4Gの時代に他国を追いかける立場を余儀なくされたことで、中国政府は5Gテクノロジーの開発に特に力を入れてきた。中国政府は2014年、関連のエコシステムに属するプレイヤーをまとめ、シナジー効果を生み出し協力状況を改善する狙いで、5G推進グループ「IMT-2020」を立ち上げた。また、特に2014年に国家集積回路産業投資基金(National Integrated Circuit Industry Investment Fund)を創設することにより、同セクターへの投資を支援した。その目標は、国内の半導体産業を、2016年の650億ドル規模から2030年には3050億ドル規模に拡大することである。こうした政策枠組みによる支援を受けて、中国企業は急速に民間セクターにおける研究開発を増加させることができた。

 

5G推進に向けた中国の調和の取れたアプローチのおかげで、多くの中国企業は、先行組となった自国の競争優位による恩恵を受けやすくなるだろう。現在の5Gネットワーク規格に関する特許の推定40%は中国企業によるものである。さらに、中国企業は5Gによる恩恵を受け始めている。ファーウェイはネットワークインフラ分野で世界首位に立っており、現在、市場の29%を握っている。さらに5Gは携帯電話の買い替えサイクルを引き起こすと予想されており、携帯電話メーカーの世界上位5社のうち3社は中国企業(ファーウェイ、シャオミ、オッポ)である。中国信息通信研究院(CAICT)によれば、2025年までに5G市場の規模は中国のGDPの3.2%、金額にして1660億米ドルに達する可能性があるという。

 

5G分野における中国の野心が直面する課題

 

1) 米中貿易戦争のもとでの保護主義

米国・中国のあいだで貿易戦争が展開されるなかで、エレクトロニクス分野は特に関税の対象になっている。25%の関税率の対象となる中国からの輸入品2000億米ドル相当のうち、51%はエレクトロニクス製品である(携帯電話23.5%を含む)。米国による関税は、最大の市場に向けた中国の輸出品の交易条件を悪化させている。これによって米国企業・消費者は、需要を中国以外に分散させるインセンティブが与えられている。それだけでなく、中国の5Gテクノロジー企業は、依然として重要な部品を輸入に頼っている。そのため中国企業は、サプライチェーンリスクに曝されている。2019年5月、米国は、連邦政府による承認がない限り米国企業がファーウェイ及びその関連企業に対して部品・コンポーネントを供給することを禁止すると発表した。ファーウェイが調達するコンポーネントの約16%が米国企業由来であることを考えると、これによってファーウェイのサプライチェーンに大きな混乱が生じる可能性がある。

 

2) サイバーセキュリティ上のリスク

中国企業に5Gネットワークの展開を委ねることは、多くの受け入れ候補国にとってサイバーセキュリティ上のリスクになると見られている。米国を筆頭に、多くの国は、ファーウェイの5Gネットワークインフラを用いることが脅威になると主張している。バックドアが設けられることで、中国政府が外国企業・消費者に関する機密データにアクセスできるようになるためだ。セキュリティ及び透明性に関する保証を求める声に対応することは、ファーウェイ及びすべての中国テクノロジー企業に取って大きな課題となっている。

 

3) テクノロジー自体の制約

5Gテクノロジーが実用化され、統一的なSA(スタンドアロン)5Gネットワークが導入されるまでには何年もかかるだろう。GSMアソシエーションでは、2025年までに5G化されるのは、すべての接続のうち14%に留まると予想している。5Gが新たな電気通信の標準になるまでの道のりは長い。

 

コファスのジュニアエコノミストPauline Weilは、「中国は急速に5Gテクノロジーにおける主役となってきましたが、ハイエンド製品についてはまだ輸入に頼っています。そのため、同セクターは保護主義の脅威に晒されています」と語る。コファスでアジア太平洋地域担当エコノミストCarlos Casanovaは、「現在5Gは政治的な思惑から多くの関心を集めていますが、中国企業を完全に締め出すことで同セクターの競争力は低下します。民間事業者の利益と衝突することが確実な、犠牲の多い決断と言うことになります」と語る。

 

 

 

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