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2014.09.17
カントリーリスク&経済レポート

欧州系航空会社の収益性は世界最低:適応のためのシナリオはあるか

欧州系航空会社の収益性は世界最低:適応のためのシナリオはあるか
アジアの成長ポテンシャルを取り込むことが不可欠と思われる今、欧州系航空会社は低価格航空会社や湾岸諸国系航空会社との激しい競争のために伸び悩んでいる。現在、欧州各社の収益性は世界最低である。こうした新たな制約のもとで、どのような変革が考えられるだろうか。

 

大きな課題に直面する航空各社

 

 競争圧力の高まり

 

アメリカ国内市場が1978年に自由化される一方で、欧州連合が域内市場を自由化したのはようやく1997年になってからである。それ以降、すべての欧州系航空会社は、輸送量の制約なしに域内で航路を設定し、自由に価格を設定できるようになった。この統一市場の誕生は低価格航空会社を中心とする新規参入に有利に働き、域内航空運賃は大きく下落することになった。こうして、1992年から2012年のあいだに、2社以上の航空会社が参入する航路の数は4倍となった[1]

 

一方で、長距離航路に関しても、これまで優秀な業績を残している湾岸系航空会社と競争が、さらなる勢いで激化していった。これは特に、湾岸地域の活性化を目標とする公的機関による積極的な戦略によるところが大きい。新たな運航権を取得できなかったことを理由として、欧州系航空会社における湾岸系航空会社の持ち株比率もこのところ上昇している。

 

 ハブ空港の移動

 

欧州航空市場の浸透率は人口100万人あたり5万1000席であり、比較的よく発達していると見られる。富の増大と航空輸送のあいだの弾力性は、新興市場諸国においてはるかに高くなっている。これらの国では、GDPが10%増大すると航空輸送需要が20%増大する(先進諸国では15%)。最も成長ポテンシャルが高いのは、現在も将来もアジアである。中国を例に取ると、1992年から2012年にかけて、1週間のフライト数は2184便から5万2651便に増大している[2]

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以上のような新たな制約により、欧州の航空部門全体が弱体化している。2014年にエールフランス、ルフトハンザが収益について警告を発したことに見られるように、欧州系航空会社の収益性は世界最低になってしまった。さらに欧州連合は、投資不足に伴う空港の処理能力低下にも悩んでいる。こうした飽和状態により、需要を取り込む見込みが低下し、運航コストが2050年までに50%も増大する可能性がある。[3]

 

アメリカ型シナリオをめざすのか

 

「こうした競争圧力の増大を前にして、考えられるシナリオは二つだ。増大する需要を取り込むために巨額の投資を行うか、生き残りのために合併するかだ。アメリカ国内市場で広範な合併を伴う変革が起きたことを思えば、我々にとって最も可能性が高いのは、この二つめの想定である」と語るのは、コファスのエコノミストGuillaume Baquéである。

 

米国では、1978年10月の連邦航空規制緩和法を原因とする変革は、大きく分けて3つのフェーズで展開された。

 

  • フェーズ1:新たな低価格航空会社の展開により乗客数が増大。価格設定が自由になったことで多種多様な供給が可能になり、航空機の座席利用率(有償搭乗率)が上昇。これには1984年のデルタ航空による収益管理システムの発明も貢献している。

 

  • フェーズ2:2008年以降、参入企業数の増大が航空部門の収益性に影響を与えるようになったため、市場の統合が進む。デルタはノースウェストを、サウスウェストはエアトランスを買収し、アメリカン航空はUSエアウェイズと合併するだろう。1990年代の7大航空会社は3つの巨大航空会社へと変貌した。

 

  • フェーズ3:ネットワークの合理化との関連で規模の経済(スケールメリット)を達成するため、処理能力を制限する。手段として、ハブ空港の数を削減し、関連費用の抑制により結果的に収益を増大させる。

 

欧州では第一波の合併がすでに生じているが(エールフランス/KLM、ルフトハンザ/スイスエアライン、ブリティッシュエアウェイズ/イベリアなど)、期待されていた収益性向上はまだ不十分である。アメリカ型シナリオの第2フェーズに匹敵するような、さらなる合併への動きが生じる可能性はある。しかし、欧州連合における巨大航空会社の誕生によって域外の競合他社に対抗できるとしても、それに伴って、航路減少や価格上昇の可能性といった新たな問題が生じるだろう。

[1] OAGのデータ。

[2] IATA(2007年)、航空旅行の弾力性の試算、12月。

[3] SESARによる。

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