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2016.12.02
カントリーリスク&経済レポート

2017年のドイツ経済:安定しているが安閑としてはいられない

2017年のドイツ経済:安定しているが安閑としてはいられない

今後、ドイツがさらなる経済成長をより高い安定度で達成することが期待できそうだ。したがって、確固たる成長を遂げるというコファスの予測には特に驚きはない。今年の国内総生産(GDP)成長率は1.8%と予測されている。来年の成長率は、1.7%とわずかに低くなるだろう。2017年の成長を主としてけん引するのはやはり民間消費で、これを記録的な高水準となっている同国の雇用が後押ししている。ドイツ経済のリスクは、輸出サイドにある可能性がある。国際貿易は2017年には安定成長を示すにとどまるだろう。ドイツのおもな輸出先各国では、来るべきブレグジットや中国・米国経済の冷え込みなど、具体的なリスクが潜んでいる。さらに、米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が選ばれたことによる経済的な影響は、依然として不透明だ。ドイツの輸出は、2016年には2.3%、来年も3.4%の伸びにとどまるだろう。

 

破産件数は減るものの損失額は増える

こういった環境にあって、コファスは破産件数の押し下げ圧力は続くと予測する。5年連続の減少で、2017年には21,000件前後と、記録的な低水準になるだろう。この下落傾向は、幾分ペースは遅くなるものの、今後も続くものと見られる。今年の5%の減少に続き、コファスでは2017年はさらに4.2%の破産件数の減少を予測している。

そういった明るい見通しにもかかわらず、特に大企業におけるいくつかの部門は競争、コスト及び利益幅の圧力が高まっている状況に置かれているため、破産手続きにおける売掛債権残高の金額はさらに増える可能性がある。2016年8月までは、開始された破産手続きの影響を受けることが予想された債権は、2015年の同時期のそれを明らかに上回っていた。200億ユーロ近い金額は、昨年の債権額よりも70%以上高い。その理由は、破産件数そのものは減少しているにもかかわらず、SteilmannやUnisterのような経済規模の大きい企業において破産が増えているためである。破産手続きにおける債権が特に急増しているのは、フリーランスと科学技術サービス(80億ユーロ近く)、非建設業(40億ユーロ近く)、貿易セクター(20億ユーロ以上)である。貸し倒れも、債務残高が約5億ユーロと比較的少額にもかかわらず、農業食品でやはり顕著に増加した。

「ドイツ経済の安定した見通しは、必ずしも、ドイツの企業が来年に向けて警戒を緩めてもよいということを意味しない。輸出志向型のドイツ経済に特に影響を及ぼす可能性のある外的リスクが数多くある。さらに、大連立政権の改革疲れの後で、次の政権が広範囲に及ぶ大々的な経済政策を打ち出すとは思いにくい。これらの不確定要素を考えると、来年、企業が管理できる限界を超えて投資を拡大することには消極的になるだろう」と、コファスの北ヨーロッパ地域担当エコノミストであるマリオ・ジュン博士(Dr. Mario Jung)は説明する。

 

ドイツの輸出成長率は2015年後半以降確実に減速している

ドイツの商品輸出にとってはまたしても(輸出量ベースで)記録的な年となったが、成長率は2015年後半以降、明確に縮小している。2016年第1四半期、世界の貿易量が2010年秋以降で初めて微減したことの影響を受け、ドイツの輸出成長率はほぼ横ばいとなった。その後の回復もダイナミックとは程遠い。2016年前半は、世界貿易とドイツの輸出がいずれも極めて低調だった。第2四半期に入ると、世界貿易の緩やかな伸びのおかげで、ドイツの輸出企業もやや業績を回復した。ドイツの輸出企業は、世界貿易の変遷、特に急激な増加や激減に対して、不釣り合いなほど強い反応を示す。

2017年のドイツの輸出の見通しは、慎重を要するが楽観的なものである。それでもなお、ドイツ貿易にとって重要な各国においては下方リスクが優勢であることを考慮に入れる必要がある。2017年の経済見通しの分析において、ドイツの輸出先である上位10カ国は2016年と比べて情勢が弱まっている。ドイツ輸出全体の約60%がこれらの国に向けられたものである。

特に、最も重要な油種先5カ国のうち4カ国で経済が減速していることの影響は大きい。輸出国として第3位である英国については、主としてブレグジットの影響で経済成長率は1.9%から0.9%へと大幅に落ち込むだろうとコファスでは予測している。これが、ドイツの輸出に深刻な影響を及ぼすだろう。中国では漸進的な経済成長の減速は今後も続くものと見られ、さらに今や全輸出の約9%のシェアを占めるなど、ドイツにとって最も重要な顧客である米国でも、見通しは明るくない。ドイツにとって第2の輸出国であるフランスでも、2017年にはさらに経済成長が幾分後退するものと予想される。

これらのネガティブな影響は、トップ10輸出国のその他の国の経済見通しがやや好転したことで、いくらかは相殺される。さらに、ドイツの輸出の30%前後を占める新興市場諸国では、明らかにもっと高い経済成長率が期待される。

 

民間消費が経済活動をけん引する

「ドイツ経済の堅調な成長の予測は、主として民間消費のダイナミックなペースによるものです」と、マリオ・ジュン博士は説明する。「民間の家計消費は2017年にはさらに加速し、2015年の1.9%、2016年の1.6%から、2.0%にまで拡大します。これを念頭に置いて、2006年から2014年までの民間消費の平均成長率を見てみると、わずか0.8%です。当時のドイツ経済の成長は主として純輸出に頼っていました」2017年には、成長を支える純輸出の勢いは鈍くなり、減速するとさえ見られている。コファスの予測では、これらの民間消費の力強い動きにより国内総生産は1.7%拡大し、そのうち三分の二(1.1パーセント・ポイント)が民間消費によるものである。

 

2017年の選挙:大連立に幕が下ろされるのか?

連立与党の各党は、来年の選挙では無傷ではいられないだろう。現在の調査によれば、キリスト教民主同盟と社会民主党(SPD)は、前回の議会選挙(2013年9月)時と比べて低い獲得スコアにとどまっている。また、2015/2016年の年末年始に実施された調査の結果をも下回っている。

それでもなお、連邦政府の大まかな将来像は安定性を反映しており、大連立の更新以外の結果になれば驚きとしか言いようがない。現在参照可能な調査はすべて、依然として大連立が絶対多数を確保する安全圏にあることを示している一方、他のどの2党の連立でも過半数を獲得できる見込みはない。いくつかのグループが模索しているSPD、左翼党及び緑の党の3党の連合が実現したとしても、絶対多数を確保する可能性は低いだろう。

より小規模な大連立や、ドイツのための選択肢(AfD)が連邦議会に新たに議席を持つことなどが実現すれば、政治的コンセンサスを得る妨げとなるだろう。1953年以来初めて、政治的志向は極めて多岐に及ぶ6つの会派がドイツ連邦議会に議席を持つことになる。さらに、党首たち(同盟のメルケル氏とSPDのガブリエル氏)については議論の余地がないとは言い難く、経済社会政策を含む次期大連立下での大規模な改革プロジェクトは、ますます困難になっていくだろう。

これら、ドイツの政治的展開における潜在的リスクは、欧州コミュニティ内での政治不安を煽り、EUレベルでの合意形成の足を引っ張る新たな要素と化す可能性がある。

 

 

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  • Germany’s parliamentary elections in 2017
  • Stable economic environment – fewer insolvencies
  • Global trade dampening export growth potential
  • Private consumption – major growth driver

 

 

 

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